モミガラくん炭を用いたバラの養液栽培における安定生産のための給液管理技術
- [要約]
- バラの養液栽培においてモミガラくん炭培地を用いる場合、気相率が高いため、給液量をロックウール栽培よりも25%増やし、給液回数は1日最低6回が必要である。また、同培地における給液ECを通年0.8mS/cmとロックウール栽培に比較して約50%の濃度で管理しても、約15%多い採花本数を確保しながら、排出される硝酸態窒素を約30%削減できる。
- [キーワード]
- バラ養液栽培、モミガラくん炭、給液量、給液回数、給液濃度、硝酸態窒素
- [担当]
- 佐賀農業セ・土壌環境部・土壌・肥料研究担当
[代表連絡先]電話0952-45-2141
[区分]九州沖縄農業・生産環境
[分類]技術・普及
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[背景・ねらい]
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バラの養液栽培では、培地として主にロックウールが用いられているが、使用後の廃棄に問題があることや、栽培に伴い多量に排出される排液による環境負荷が懸念されている。そこで、本県で安定して入手が可能で、安価、かつ自然循環が可能なモミガラくん炭培地を用いたバラの養液栽培において安定生産を確保しつつ、環境負荷の低減が可能な給液管理技術の確立を図る。
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[成果の内容・特徴]
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バラの養液栽培で主として用いられているロックウールに比較して、モミガラくん炭は気相率が高い(図1)。
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モミガラくん炭培地では、給液量をロックウール対比125%、給液回数を1日6回として培地pFをロックウールよりも低く保つことで(図2)、採花開始後2年間の採花本数はロックウールよりも約15%増加する(表1)。
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ロックウール栽培では、主に愛知農試バラ処方の給液組成(表3)に基づいて給液管理が行われているが、モミガラくん炭培地では、多量要素をロックウール栽培の約50%の濃度で給液管理(EC0.8mS/cmで通年管理)しても、採花本数は多量要素が標準濃度の場合と同等以上確保できる。また、切り花長にも大差ない(表1)。
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給液ECを下げることが可能なため、系外へ排出される硝酸態窒素はロックウール栽培に比較して約30%低減できる(表2)。
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[成果の活用面・留意点]
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供試品種は、県内で作付け農家割合の高いローテローゼ(緑枝挿し木苗)とした。モミガラくん炭の培地量は3.7L/株(ロックの112%)、給液には点滴チューブ(突出孔10cm間隔)をベット当たり2本用いた。仕立て法はアーチング仕立てとした。
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給液の成分組成は園試処方を改良した愛知農試バラ処方(夏用・冬用)に準じた。また、給液濃度の低減は、微量要素欠乏が発生するため、多量要素についてのみ行う。
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モミガラくん炭は焼成温度が高いほどpHが高いため、使用前に充分な水洗いが必要である。
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[具体的データ]
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図1 異なる2種類の培地における三相分布

図2 1日当たり給液量および給液回数が培地pFに及ぼす影響

表1 培地および給液管理の違いが採花本数に及ぼす影響

表2 系外に排出された硝酸態窒素量

表3 愛知農試バラ処方
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[その他]
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研究課題名:バラの養液栽培におけるモミガラくん炭培地を用いた環境にやさしい養液管理技術の確立
予算区分 :県単
研究期間 :2003〜2007年度
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