Navigation>>九州沖縄農業研究センター >> 研究成果情報 >> 平成17年度目次

露地秋播きホウレンソウ栽培における硝酸イオン低減のための土壌診断


[要約]
露地冬出しホウレンソウ栽培において、最終追肥の省略により収穫物中の硝酸イオン濃度の低減が可能である。目標収量10a当たり2tを確保するための最終追肥省略の判断は土壌中の硝酸態窒素含量5mg/100gによって行う。なお、土壌診断は硝酸態窒素含量早見表を用いることにより簡易に行うことができる。

[キーワード]
ホウレンソウ、硝酸イオン、土壌、土壌診断

[担当]
福岡農総試・土壌・環境部・施肥高度化チーム

[代表連絡先]電話092-924-2939	
[区分]九州沖縄農業・生産環境	
[分類]技術・参考	

[背景・ねらい]
飲料水や食品に含まれる硝酸イオンの過剰摂取による健康被害が危惧されている。特に、過剰施肥による葉菜類中での硝酸イオン集積が指摘されている。消費者に対して、安全な農産物を供給するために、これを回避するには土壌中の硝酸態窒素の含量を診断して、これに基づき、施肥を省略すること、不足しているときにのみ施肥を行うことが挙げられる。そこで、露地冬出しホウレンソウ栽培において収穫物中の硝酸イオン集積に最も深く関与していると考えられる最終追肥の省略の目安となる土壌診断の指標値を明らかにし、硝酸イオン濃度の低減に資する。

[成果の内容・特徴]
  1. ホウレンソウ中の硝酸イオン濃度は最終追肥の省略によって低減できる。土壌中の硝酸態窒素含量5mg/100g以上のとき、最終追肥を省略しても、収量が目標水準である10a当たり2tは確保できる(表1)。

  2. 土壌診断は未風乾土に2倍量の蒸留水を加えて抽出、ろ過した後のろ液について硝酸イオン試験紙と小型反射式光度計を用いて行う(図1)。

  3. 土壌診断の際には、水分補正を行うために含水率を測定する必要があるが、露地ホウレンソウ栽培期間中の土壌の含水率は、16〜26%の範囲に大半がおさまるため、早見表を用いることにより含水率を把握することは不要である。土壌中の硝酸態窒素含量5mg/100gに対応する小型反射式光度計での硝酸イオン濃度の測定値は、70〜86である(図2表2)。

[成果の活用面・留意点]
  1. 土壌の採取位置は条間中央部の表層から10cmのところとする。

  2. 図2は砂壌土での調査結果である。

  3. 硝酸イオン低減化の指導のための資料として活用できる。

  4. ヨーロッパにおけるホウレンソウの硝酸イオン濃度規制値は3,000mg/kgである。

  5. 最終追肥を施用する際の窒素施用量は、県基準の3kg/10aとする。

[具体的データ]

表1 ホウレンソウ露地栽培における2回目の追肥施用時の土壌中硝酸態窒素含量と収量および硝酸イオン濃度


表2 土壌診断用硝酸態窒素含量早見表


図1 土壌簡易診断のフローチャート


図2 露地ホウレンソウ栽培時の土壌の含水率の分布

[その他]
研究課題名:暖地冬春ホウレンソウ、タカナ類の品種および栽培方法の改善とリアルタイム診断に基づく肥培管理による硝酸塩低減化
予算区分 :高度化事業
研究期間 :2002〜2004年


目次へ戻る