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光学的手法による稲の植物面積指数の測定誤差の簡易補正法


[要約]
プラントキャノピーアナライザなどの光学的手法による植物面積指数の測定値の

過小評価は、作物の葉群傾斜角を用いて簡単に補正することができる。

[キーワード]
PAI、葉群傾斜角、稲、プラントキャノピーアナライザ

[担当]
九州沖縄農研・環境資源研究部・気象特性研究室

[代表連絡先]電話096-242-7766	
[区分]九州沖縄農業・生産環境(農業気象)	
[分類]科学・参考	

[背景・ねらい]
作物の植物面積指数(PAI:単位土地面積あたりの葉・茎・穂などの投影面積の合計)は、群落内の日射環境や光合成に影響を与え、さらに適切な栽培管理を行う上で重要な要素であるが、その直接的な測定には多大な労力を必要とする。そのため、放射伝達理論にもとづいてPAIを非破壊で迅速に測定できる光学的手法が発達し、プラントキャノピーアナライザなどの測定機器が市販されている。しかしながら、稲や小麦のように条植された多くの作物では、光学的手法によるPAIの測定値が過小評価となることが経験的に知られており、その原因の解明と補正方法の開発が望まれていた。

[成果の内容・特徴]
  1. 光学的手法による稲のPAIの測定値は、栽培全期間を通じて直接測定値よりも小さく、特に出穂期前後に過小評価が著しい(図1)。これは、出穂期前後には葉群の分布が偏り、光学的手法で仮定されているランダム分布と大きく異なることに起因する。

  2. 稲のように条植された作物では、葉群傾斜角が鉛直に近づくほど葉群分布の偏りも著しくなる性質を利用し、光学的手法によるPAIの測定値(PAIPCA)の実測値(PAID)に対する比率と葉群傾斜角(α:光学的手法による測定値)との関係を表す次式を作成した。(図2

            
    ここで、αは誤差が最大のときの過小評価率、bは葉群傾斜角の影響の強さを表すパラメータ、cは誤差が最大の半分となるときのsinαの値である。フィッチングして得られたそれぞれの値はa=0.351、b=100.9、c=0.757である。上式を用いて光学的手法によるPAIの測定値を補正すると直接測定値とほぼ一致する。(図1

  3. 上記パラメータの決定に用いていない他年次のデータについても、補正することによって誤差(RMSE)は0.725から0.307へと小さくなり、実際のPAIにより近い値を得ることができる。(図3

[成果の活用面・留意点]
  1. 光学的手法によるPAIの測定値を簡単に補正することができる。

  2. 散播された稲、あるいは稲以外の条植された作物に対しては、直接測定値を用いて別にパラメータを決定する必要がある。

[具体的データ]

図1 光学的手法による水稲のPAIの測定値(PAIPCA:プラントキャノピーアナライザ)と直接測定値(PAID:個体別調査法)の比較


図2 水稲の葉群傾斜角(α)と光学的手法によるPAIの過小評価率(PAIPCA/PAID)の関係


図3 光学的手法による水稲のPAIの測定と直接測定値の比較(補正法の検証データ)

[その他]
研究課題名:気候変動にともなう水田域の水需要変化の把握
課題ID:07-06-03-01-11-05
予算区分 :「交付金」
研究期間 :2004〜2005年度


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