Navigation>>九州沖縄農業研究センター >> 研究成果情報 >> 平成17年度目次

紫サツマイモ味噌の抗酸化活性と血液流動性改善作用


[要約]
紫サツマイモ「ムラサキマサリ」から製造した紫色の味噌は、アントシアニン、ポリフェノール類を含み、試験管レベルでは高い抗酸化活性、実験動物レベルでは血液流動性改善作用を示す。

[キーワード]
紫サツマイモ、アントシアニン、抗酸化性、血液流動性、味噌

[担当]
九州沖縄農研・作物機能開発部・食品機能開発研究室

[代表連絡先]電話096-242-7870	
[区分]九州沖縄農業・流通加工、畑作、作物・夏畑作物	
[分類]技術・参考	

[背景・ねらい]
紫サツマイモに含まれるアシル化アントシアニンは体内吸収され、血圧降下作用や血液流動性改善作用などの機能性を発現する。一方、消費者は生活習慣病に対する不安から健康意識が高まっており、健康に良い食品を待望している。そこで大豆と紫サツマイモなどを原材料にした味噌のプロトタイプ試醸品について、抗酸化活性と血液流動性改善作用を調べる。

[成果の内容・特徴]
  1. 味噌原材料の紫サツマイモはアシル化アントシアニンやクロロゲン酸等の機能性成分を豊富に含む。これらの成分は高いラジカル消去活性(試験管内レベルでの抗酸化活性評価指標)を有するが、麹菌の作用により味噌の発酵・熟成中に分解され、非アシル化アントシアニンやカフェ酸となる(図1)。しかし、分解物のカフェ酸にもラジカル消去活性は保持されており、全体の活性は熟成後にやや高まる(図2)。

  2. 紫サツマイモ味噌は、市販の米味噌や麦味噌、豆味噌に比べて高いラジカル消去活性を示す(図2)。また、紫サツマイモ味噌のラジカル消去活性は、摂氏100度で加熱処理しても低下しないので、加熱調理に対して耐性を示す。

  3. ラットにストレス(絶飲食、全身拘束)を加えると血液は流れにくくなる。2回目のストレス負荷後、蒸留水を投与しただけでは血液流動性は低下したままであるが、紫サツマイモ味噌を投与した場合には改善される(図3)。

[成果の活用面・留意点]
  1. 紫サツマイモ味噌は、クエン酸を含み原料サツマイモの色調を活かした加工食品原料としてすでに利用されているが(図4)、原材料の特性を活かした高機能性味噌であることを示すことで、より付加価値を高めることができる。

  2. 紫サツマイモ味噌は紫サツマイモ「ムラサキマサリ」と大豆「エルスター」を原材料とし、配合割合(重量%)は麹(蒸しサツマイモ40.5%、大豆粉27%)、仕込み原料(蒸しサツマイモ16.9%、蒸し大豆5.6%)、食塩10%である。

  3. 血液流動性改善作用は実験動物を用いた研究結果である。ヒト介入試験ではまだ実証していない。

  4. 血液流動性改善作用は原材料の紫サツマイモから調製したアントシアニン含有物にも認められることから、効果を発現する成分は原材料に含まれているアントシアニンなどを中心にした成分あるいはその体内吸収後の代謝産物に由来すると推測される。

[具体的データ]

図1 紫サツマイモ味噌発酵・熟成中の機能性成分の変化


図2 紫サツマイモ味噌及び市販味噌のDPPHラジカル消去活性


図3 紫サツマイモ味噌経口投与によるストレス負荷ラットの血液流動性の改善


図4 紫サツマイモ味噌(中央)を利用した商品例

[その他]
研究課題名:有色カンショ新規加工製品の健康機能性評価
課題ID:07-07-03-01-24-05
予算区分 :ブラニチ4系
研究期間 :2003〜2005年度


目次へ戻る