水稲乾田不耕起直播栽培における前作緑肥作物の効果
- [要約]
- 水稲乾田不耕起直播栽培の前作として緑肥作物のレンゲ、ヘアリーベッチを作付けし、水稲播種前に刈落とすと、刈落とした緑肥作物が田面を被覆することにより雑草の発生が抑制され、緑肥作物の肥料効果により水稲の収量が増加する。
- [キーワード]
- イネ、直播、緑肥作物、雑草
- [担当]
- 熊本県農業研究センター球磨農業研究所、同生産環境研究所
[代表連絡先]電話0966-45-0470
[区分]九州沖縄農業・水田作
[分類]技術・参考
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[背景・ねらい]
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水稲乾田不耕起直播栽培は移植栽培と比べて大幅な省力化が可能な反面、除草剤の使用回数が多くなることと、収量が不安定であることが知られている。そこで、緑肥作物(レンゲ、ヘアリーベッチ)を水稲の前作として作付することにより、除草剤の使用回数を低減し、収量を安定させる技術を確立する。
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[成果の内容・特徴]
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水稲乾田不耕起直播栽培において、前作水稲の立毛中に緑肥作物(レンゲ、ヘアリーベッチ)を播種し、水稲播種前に刈落とすことにより、以下の効果がある。
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緑肥作物が田面を被覆することにより雑草の発生が抑制され、乾田不耕起直播初年目は2回(2剤)の除草剤処理でほぼ完全に除草ができる(図1)。2年目では抑制効果が低下するが、2回(2剤)の除草剤処理で慣行の4回(5剤)処理と同等の除草効果が得られる(図2)。
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刈落とした緑肥作物に含まれるN成分(表2)の分解に伴って水稲の生育量が大きくなり、増収する。緑肥の増収効果は無肥料栽培では緩行性N1.0kg/aとほぼ同等、慣行施肥栽培(緩行性N1.0kg/a)ではN0.2kg/a増施と同等以上である(図3)。
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[成果の活用面・留意点]
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- 本成果は、黒ボク土壌(減水深40mm)においてヒノヒカリを供試した試験の結果である。
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緑肥作物の生育量は年次変動が大きく、生育量が小さいときは除草効果及び肥料効果が低下する。また生育量が大きいと水稲播種時の作業速度および作業精度が低下するので、地上部乾物重が300〜500kg/10aの時に刈落とすようにする。
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乾田不耕起直播では開始後2年目以降は雑草(特にノビエ)の発生量が多くなるため、発生状況を見ながら除草剤を適期に使用する。
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[具体的データ]
緑肥作物の雑草抑制効果

表1 除草体系

図1 初年目の残草乾物重(2003年)

図2 2年目の残草乾物重(2004年)
緑肥作物の増収効果

表2 緑肥のN成分分析結果(生産環境研究所土壌肥料研究室、2003〜2006年平均)

図3 a当たり玄米収量(2005〜2006年)
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[その他]
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研究課題名:球磨地域における水田作物の省力・低コスト生産技術の確立
予算区分 :県単
研究期間 :2003〜2006年度
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