飼料イネ用新品種「タチアオバ」の熊本県南部での栽培特性
- [要約]
- 飼料イネ用新品種「タチアオバ」は、通常の収穫作業では脱粒はほとんど見られず、麦跡等の普通期移植栽培・直播栽培およびたばこ跡等の晩期移植栽培のいずれでも糊熟期〜黄熟期での稲発酵粗飼料としての収穫が可能である。TDN収量は「モーれつ」と同程度かやや優り、耐倒伏性は「モーれつ」と同等以上である。
- [キーワード]
- 飼料イネ、新品種、タチアオバ、栽培特性、熊本県南部
- [担当]
- 熊本県農業研究センター球磨農業研究所、同畜産研究所
[代表連絡先]電話0966-45-0470
[区分]九州沖縄農業・水田作、九州沖縄農業・畜産・草地(草地飼料作)
[分類]技術・参考
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[背景・ねらい]
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人吉球磨地域では、耕畜連携により約280haの稲発酵粗飼料用飼料イネが栽培されている。現在中心的に栽培されている飼料イネ用品種「モーれつ」は収量性、耐倒伏性に優れるが、調製作業時の脱粒によるサイレージ品質の低下や雑草化が問題となっている。また、たばこ後作の7月中旬以降の移植栽培においては出穂が遅く、栄養価が高いとされる糊熟期〜黄熟期に達しないことも問題である。そこで、新たに育成された飼料イネ用品種「タチアオバ」について、収量性、耐倒伏性および晩期栽培の適応性等について検討し、栽培特性を明らかにする。
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[成果の内容・特徴]
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「タチアオバ」は「モーれつ」と比較して以下の特徴を有する。
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「モーれつ」よりも明らかに脱粒しにくく、通常の収穫作業(手刈り)では脱粒はほとんど見られない。
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6月下旬移植、7月中旬移植のいずれでも出穂後40日で糊熟期〜黄熟期に達する。乾物収量は6月下旬移植では「モーれつ」と同程度かやや優り、7月中旬移植では「モーれつ」と同程度かやや劣る。TDN含量は「モーれつ」より高く、TDN収量は「モーれつ」と同程度かやや優る。耐倒伏性は「モーれつ」と同等以上である(表1、表2)。
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湛水直播(6月中旬播種)、乾田直播(6月上旬播種)のいずれでも出穂後40日で糊熟期〜黄熟期に達する。乾物収量は「モーれつ」と同程度で、TDN含量は「モーれつ」よりも高く、TDN収量は「モーれつ」と同程度かやや優る。耐倒伏性は「モーれつ」と同等以上である(表3)。
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[成果の活用面・留意点]
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熊本県南部における稲発酵粗飼料用飼料イネの生産に活用できる。特に、「モーれつ」で脱粒性および収穫時の熟期が問題となっている地域では有効である。
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「タチアオバ」は極晩生であるので、極端な晩植栽培および高冷地における稲発酵粗飼料用飼料イネとしての栽培には適さない。
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「タチアオバ」はいもち病および白葉枯病に対しては「モーれつ」ほど強くないので、常発地での栽培は避ける。
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「タチアオバ」の玄米の外観は食用品種と変わらないので、食用品種への混入に注意する。
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[具体的データ]
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表1 「タチアオバ」の移植栽培における成績(2004年)

表2 「タチアオバ」の移植栽培における成績(2005年)

表3 「タチアオバ」の直播栽培における成績(湛水2004年、乾田不耕起2005年)
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[その他]
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研究課題名:球磨地域における水田作物の省力・低コスト生産技術の確立
予算区分 :県単
研究期間 :2004〜2005年度
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