暖地中山間地域における水稲有機質肥料栽培
- [要約]
- 中山間地域における有機質肥料栽培では、100%有機肥料、特栽用50%有機肥料やペレット牛糞堆肥を用いても化成肥料並みの収量が得られる。穂肥を出穂前20日および30日に施用しても収量は同程度である。米ぬかの全量基肥栽培では収量が低下する。
- [キーワード]
- 水稲、中山間地域、有機質肥料栽培
- [担当]
- 大分農研セ・水田農業研・久住試験地
[代表連絡先]電話0974-76-0033
[区分]九州沖縄農業・水田作
[分類]技術・参考
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[背景・ねらい]
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近年、食の安全を志向する動きが強まり、特別栽培農産物や有機栽培農産物の生産が拡大しつつある。これらの動きに呼応して特栽用50%有機肥料などの各種有機質肥料が市販され、減化学肥料栽培や無化学肥料栽培に取り組みやすくなっている。また、米ぬかを用いた栽培も農業雑誌等で紹介され注目されている。このような有機質資材を用いた減化学肥料栽培は、省力化や低コスト化を図りにくい中山間地においては特色ある米作りを推進する上で重要である。そこで、各種有機質資材が収量、品質および食味に与える影響を明らかにする。
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[成果の内容・特徴]
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特栽用50%有機肥料、ペレット牛糞堆肥や100%有機肥料を基肥とした栽培(表1)では、化成肥料と窒素施肥量および穂肥施用時期が同じであれば、化成肥料と同程度の収量が得られる。また、穂肥を出穂前30日に施用した場合でも、収量は化成肥料と同程度である(表2)。
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有機質資材を用いて栽培した場合、窒素施肥量が化成肥料と同程度であれば品質、検査等級および食味の低下は小さい(表2、表3、表4)。
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米ぬかを基肥に用いた場合、穂肥を施用しない場合には籾数が不足して無肥料並みの収量となる。穂肥を出穂前30日に施用することで、収量は化成肥料の95%程度にまで近づけることができる(表2)。
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有機物資材を用いた栽培を行うと、化成肥料栽培に比べ出穂期や成熟期が1〜3日遅くなる。特に、米ぬかを用いた栽培では出穂期が2〜3日遅くなる(表2)。
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[成果の活用面・留意点]
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標高550m程度の中山間地域における「おおいた11」(クジュウ級の早生品種)での試験成績である。
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標高400〜600m程度の中山間地域で、有機質肥料を用いた水稲栽培の参考資料として活用できる。
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本試験で用いた100%有機質肥料とは、蒸製毛粉、なたねかす、蒸製骨粉、魚粉等を配合して生成された市販の肥料である。
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有機質肥料には窒素含有率が低いものが多く、投入施肥量が多くなるため(表1)施肥方法の効率化が必要である。
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[具体的データ]
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表1 本試験で用いた有機質肥料と施肥量

表2 生育、収量および品質調査成績(2005〜2006年)

表3 基肥資材と食味分析

表4 穂肥施用時期と食味分析
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[その他]
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研究課題名:「おおいた11」の減農薬・減化学肥料栽培技術の確立
予算区分 :県単
研究期間 :2005〜2006年度
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