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芋焼酎廃液濃縮液の水稲「ヒノヒカリ」に対する肥料効果


[要約]
水稲「ヒノヒカリ」の移植及び直播栽培において、芋焼酎廃液濃縮液800ml/m2を基肥施用あるいは分施すると、初期生育が抑制されるものの、化成肥料の窒素成分で8kg/10aの基肥施用の場合と同等以上の収量が得られる。

[キーワード]
焼酎廃液、濃縮液、水稲、ヒノヒカリ、肥料効果

[担当]
九州沖縄農研・九州水田輪作研究チーム

[代表連絡先]電話0942-52-0681	
[区分]九州沖縄農業・水田作、共通基盤・バイオマス	
[分類]技術・参考	

[背景・ねらい]
サツマイモを原料とした焼酎製造過程で生じる廃液中には除草活性を示す成分が含まれていることが報告されている。また、この溶液には窒素成分も含まれるため、除草効果と同時に肥料効果も期待できる。そこで、水稲「ヒノヒカリ」の移植及び直播栽培に芋焼酎廃液濃縮液を基肥施用あるいは分施した場合の水稲の生育・収量に及ぼす影響について検討する。

[成果の内容・特徴]
  1. 焼酎廃液濃縮液を基肥として施用した場合、6月下旬移植の水稲「ヒノヒカリ」の7月末の初期生育は、濃縮液200ml/m2の施用が最も良く、次いで800ml/m2、400ml/m2の順であり、化成肥料の窒素8kg、4kg/10a施用よりもそれぞれ劣る(図1)。

  2. 濃縮液による生育抑制は8月以降に回復し、濃縮液200ml/m2施用は400ml/m2施用に比べ、玄米収量は移植・直播ともほぼ同等である(図1表1表2)。2006年の移植栽培では400ml/m2施用では穂数がやや少ないものの、千粒重が重く、基肥4kg/10aと同等の収量が得られる(表2)。さらに、移植及び直播栽培の800ml/m2施用では化成肥料8kg/10a施用と同等以上の収量が得られ、玄米窒素含有率は化成肥料区より同等以上となるものの「ヒノヒカリ」の基準値1.3%(タンパク質含有率では6.8%)を超えず、台風、登熟期の高温等の影響で整粒歩合は低いものの差が認められない(表1表2)。

  3. 焼酎廃液濃縮液の分施施用では基肥800ml/m2施用に比べ生育抑制は少ないものの、化成肥料の分施(基肥4kg/10a+中間追肥2kg/10a+穂肥2kg/10a施用)に比べ初期生育は劣る(図2)。しかし、8月以降の生育が良くなり、基肥400ml/m2+中間追肥200ml/m2+穂肥200ml/m2施用では化成肥料の分施に比べ、穂数はやや少ないものの、総籾数、窒素吸収量が多く、千粒重も重く、基肥800ml/m2のみの施用より収量が高く、化成肥料の分施と同等の収量が得られる。なお、玄米窒素含有率は化成肥料分施よりやや高いものの1.3%を超えず、登熟期の高温等の影響で整粒歩合は低いものの差が認められない(表2)。

[成果の活用面・留意点]
  1. 無化学肥料で水稲を栽培しようとする農家への参考として活用できる。

  2. 芋焼酎廃液濃縮液はサツマイモを原料とした焼酎廃液を固液分離し、液体部分を10倍程度濃縮したもので、窒素1.2%、リン酸0.7%、カリ2.6%を含む。なお、各県毎に特殊肥料としての届出が必要であり、宮崎県では受理されている。

  3. 芋焼酎廃液濃縮液の基肥施用は移植では活着後、直播では出芽後に行う。散布方法は水口からの流し込み施肥等が考えられる。

  4. 熱水抽出性窒素4.5mg/100g程度の窒素地力の細粒灰色低地土での試験結果である。

[具体的データ]

表1 芋焼酎廃液濃縮液の基肥施用が水稲の収量等へ及ぼす影響(2005年)


図1 水稲地上部乾物重の推移


図2 水稲地上部乾物重の推移


表2 芋焼酎廃液濃縮液の基肥及び分施施用が水稲の収量等へ及ぼす影響(2006年)

[その他]
研究課題名:バイオマスの地域循環システムの構築
課題ID:411-d
予算区分 :バイオリサイクル
研究期間 :2004〜2006年度


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