エンバク「たちいぶき」の夏播き栽培は後作サツマイモの線虫害を抑制する
- [要約]
- サツマイモネコブセンチュウの増殖を抑制するエンバク品種「たちいぶき」の夏播き栽培は、後作サツマイモの線虫害を抑制する。「たちいぶき」栽培による線虫の増殖抑制は、9月上旬から下旬に播種した場合に認められる。
- [キーワード]
- エンバク、たちいぶき、サツマイモネコブセンチュウ、播種時期
- [担当]
- 九州沖縄農研・九州畑輪作研究チーム、難防除害虫研究チーム
[代表連絡先]電話096-242-7734
[区分]九州沖縄農業・畑作、九州沖縄農業・病害虫
[分類]技術・参考
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[背景・ねらい]
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エンバク品種「たちいぶき」はサツマイモネコブセンチュウ(以下、線虫)の増殖性が他のエンバク品種と比較して非常に低く、夏播き栽培(9月上旬〜12月上旬)によって線虫の増殖が抑制される(九州沖縄農業研究成果情報第21号)。しかし、この効果が後作作物の線虫害に及ぼす影響は明らかにされていない。また、エンバク夏播き栽培の播種時期は8月下旬から9月下旬とされており、夏播き時期内のいつ播種した場合に効果が期待できるのかを明らかにすることが必要である。そこで、エンバク夏播き栽培の後作としてサツマイモを栽培して線虫害の発生程度を調査するとともに、夏播き時期内に4つの播種時期を設定したエンバクの栽培試験を実施して、線虫の増殖程度を調査する。
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[成果の内容・特徴]
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「たちいぶき」の夏播き栽培(9月上旬播種)は、後作サツマイモ「高系14号」挿苗時の線虫密度を抑制し、塊根収量および品質に対する線虫害も抑制する(表1)。
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9月上旬から下旬の「たちいぶき」播種では、いずれも線虫密度の増加程度が低い。しかし、栽培期間中に線虫が2世代を経過し得る8月下旬の「たちいぶき」播種では増加程度がやや高い。一方、線虫増殖性の高い「はえいぶき」では、9月中旬の播種においても増加程度が高い。(表2)。
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「たちいぶき」の9月中旬および9月下旬の播種では、栽培終了時のエンバク根における線虫卵嚢の着生数が極めて少ない(表3)。
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[成果の活用面・留意点]
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「たちいぶき」の夏播き栽培による線虫抑制効果の目安となり、作付体系を策定する上での参考となる。
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「たちいぶき」は線虫レース(SP1,SP2,SP4)の増殖をいずれも抑制する(九州沖縄農業研究成果情報第21号)ことから、これらが発生している九州沖縄地域でその効果を活用することができる。
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熊本県合志市で行った試験結果であり、気候条件が異なる他地域における効果を確認する必要がある。
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[具体的データ]
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表1 エンバク夏播き栽培(9月上旬播種)の後作サツマイモ「高系14号」における線虫密度および塊根収量品質の比較

表2 播種時期が異なるエンバク夏播き栽培(56粒/m、条間25cm)1)における線虫密度の変化

表3 播種時期が異なるエンバク夏播き栽培における線虫産卵量の比較
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[その他]
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研究課題名:九州地域における畑地高度利用のための畑輪作システムの開発
課題ID:211-k
予算区分 :基盤
研究期間 :2006年度
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