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酵素剤添加による泌乳初期牛のTMR摂取量および泌乳成績改善


[要約]
TMRにペクチナーゼ・キシラナーゼ複合酵素を添加すると、摂取量および乳成分が向上する。特に、初産牛で効果があり、分娩後1週次よりTMR摂取量を増加し、分娩後2〜14週の乳量が増加する傾向にある。

[キーワード]
ペクチナーゼ、キシラナーゼ、TMR摂取量、乳量、乳成分

[担当]
福岡農総試・家畜部・乳牛チーム

[代表連絡先]電話092-925-5231	
[区分]九州沖縄農業・畜産草地(大家畜)	
[分類]技術・普及	

[背景・ねらい]
近年の乳牛における泌乳能力の飛躍的な向上に伴い、産乳に必要な養分量も大幅に増加しており、これを過不足なく乳牛に摂取させることが難しくなっている。特に、泌乳初期の乳牛では乾物摂取量を増加させる飼養管理が重視されている。最近、海外では、泌乳初期牛における飼料への酵素添加の影響が報告され始めた。しかし、現状では詳細なデータが不足している。これまで、当場では乾乳牛を用いてin vitroおよびin situ消化試験を行い、酵素添加により乾物およびNDF消化率が向上することを報告した(平成17年度成果情報)。そこで、酵素添加による泌乳初期牛の乾物摂取量および泌乳成績の向上技術を検討する。

[成果の内容・特徴]
  1. TMRへのペクチナーゼ・キシラナーゼ複合酵素添加は、摂取量を増加させる。特に、初産牛では効果が認められ、TMR摂取量を有意に増加させる。また、2産以上の牛では分娩後11週以降のTMR摂取量を有意に増加させる(図1図2)。

  2. TMRへのペクチナーゼ・キシラナーゼ複合酵素添加により、第一胃内容液中のプロピオン酸割合が高まる(表1)。

  3. 飼料にペクチナーゼ・キシラナーゼ複合酵素添加すると、乳量は増加する。特に、初産牛で効果的であり分娩後2〜14週にわたって効果が持続する。また、2産以上の牛では分娩直後の2〜5週に効果的である(図3図4)。

  4. ペクチナーゼ・キシラナーゼ複合酵素添加により、乳成分が向上する。分娩後2週では乳糖率、9週では全固形分率、14週では乳蛋白質率および無脂固形分率が向上する(表2)。

[成果の活用面・留意点]
  1. 酪農現場における泌乳初期牛への飼料給与に利用できる。

  2. 供試酵素として、ペクチナーゼ・キシラナーゼ複合酵素(ペクチナーゼ:800単位/g、キシラナーゼ:25単位/g、生産菌:Asperg illus usami mut. shiro-usami)を用いた。
[具体的データ]

図1 TMR摂取量の推移(初産)

図2 TMR摂取量の推移(2産以上)
注)1. 試験方法:ホルスタイン種泌乳牛(分娩〜分娩後14週)による並行試験(2004〜2005年度)
  2. 飼料給与:各区とも、ドアフィーダー飼槽に供試牛を張り付け、TMR(TDN74.2%、CP16.1%、DM89.1%)を飽食。TMRは1日2回(朝10:00、夕18:00)給与。
  3. 試験区:対照区(n=7,初産=3,2産以上=4)、酵素区(n=9,初産=4,2産以上=5)の2区。酵素区では、TMR給与時に酵素(ペクチナーゼ・キシラナーゼ複合、TMR乾物当たり2%量)をトップドレスし、混合後に給与。
  4. **:p&st;0.05、*:p<0.01で有意差有り。


表1 酵素添加が第一胃内性状に及ぼす影響(2004〜2005年度)

図3 酵素添加が乳量に及ぼす影響(初産)

図4 酵素添加が乳量に及ぼす影響(2産以上)


表2 酵素添加が乳量・乳成分に及ぼす影響(2004〜2005年度)

[その他]
研究課題名:泌乳牛におけるTMRへの酵素添加効果
予算区分 :県単
研究期間 :2004〜2005年度


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