Navigation>>九州沖縄農業研究センター >> 研究成果情報 >> 平成18年度目次

体温常時遠隔監視装置を用いた乳牛出産時期の予測及び出産開始通報システムの開発


[要約]
家畜体温の常時遠隔監視技術と体温変化で出産時刻を予測できるシステムを開発した。出産の約24時間前より体温が低下することを捉え通報するシステムであり、破水等の出産開始も把握できる。飼養者の分娩監視作業の省力化と出産時の立ち会いが可能となり分娩事故防止に効果的である。

[キーワード]
出産予測、体温、監視

[担当]
大分農研セ畜試、酪農担当

[代表連絡先]電話0974-76-1229	
[区分]九州沖縄農業・畜産草地(大家畜)	
[分類]技術・普及	

[背景・ねらい]
乳牛の妊娠期間は、平均280日とされるが、実際には20日程の幅があり、飼養者は分娩時の事故防止のため、昼夜問わず出産に備える負担がある。しかし、乳牛の分娩時刻を早期に予測できれば、分娩時の事故の予防だけでなく、分娩監視に費やす労力軽減と時間の大幅な短縮が可能となる。そこで、分娩時に生理的な変化を呈す家畜体温の常時遠隔監視技術を確立することで、連続体温測定により捉えた変化より出産時刻の予測ができる「乳牛の出産時期の予測・開始通報システム」について検討した。

   

[成果の内容・特徴]
  1. 家畜体温常時遠隔監視技術の開発

    1)体温領域である36〜42の温度範囲内で温度精度±0.2、分解能0.1とし、サイズを5mm×47mmとした小型で高精度温度センサを作製し、計測した5分毎の体温データを315MHz(TYP)にて専用受信機に送信し、無線LANを通じてサーバに蓄積するシステムを構築。センサから受信機までの送信距離は約25mを確保。センサは完全密封で5年間連続使用が可能。

    2)出産開始まで体温を計測しながら膣内に留置し、破水或いは娩出と同時に体外に排出されるPP/シリコーン材を用いた膣用留置形状(写真1)を開発。

  2. 出産時期の予測及び開始通報システムの開発

    1)出産を控えた乳牛33頭の連続体温データを解析した結果、出産前に有意な体温低下を始める時間は、娩出の平均24時間56分前であった(表1図1)。また、破水等で温度センサが体外に排出されてから娩出までの時間は平均で43分であった(表2)。このように出産前の連続体温の解析結果より、24時間以内に出産する可能性が高いことを飼養者へ通報し、次に破水等の出産が開始したことを通報するシステムを開発(図2)。

    2)飼養者へは、インターネットを経由して、パソコン、電子メール、携帯電話、固定電話など複数の通信端末に同時に通報可能(図3)。また、データは、多様な解析に活用できるようエクセルファイルとしてサーバで管理保管される。

[成果の活用面・留意点]
  1. 多頭飼育農家における分娩監視作業の軽減、分娩事故の予防、その他、畜舎や病牛等の温度管理にも活用可能。

  2. 遠隔監視や外部への通報にはインターネット常時接続環境下が必要である。

[具体的データ]

表1 出産時期の予測通報成績


表2 出産開始通報成績


図1 出産時刻までの経過時間の分布表


写真1 膣内温度測定機


図2 出産前の体温の推移


図3 システムの概要

[その他]
研究課題名:次世代型のセンシング技術を用いた家畜生体情報の監視システムの開発
予算区分 :県単独
研究期間 :2004〜2005年度


目次へ戻る