片側経腟採卵が卵胞発育ならびに黄体機能に及ぼす影響
- [要約]
- 片側経腟採卵法では、吸引を実施しない卵巣側に優勢卵胞が存在するために、吸引を実施する卵巣内に存在する最大卵胞の長径が有意に小さくなる。また黄体退行後に発情発現および排卵が起こり、次期黄体が早期に形成される。
- [キーワード]
- 片側卵巣、経腟採卵、発情周期
- [担当]
- 佐賀畜試・家畜育種研究担当
[代表連絡先]電話0954-45-2030
[区分]九州沖縄農業・畜産(大家畜)
[分類]研究・参考
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[背景・ねらい]
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近年、超音波画像を利用した経腟採卵によるウシ受精卵の効率的生産性に関する報告が多数なされている。しかし、経腟採卵による雌ウシの卵巣動態への影響については不明な点が多い。そこで、発情周期3日目より20日目まで連続6回(3〜4日間隔)の経腟採卵を実施する際の卵巣動態を明らかにするために、発情周期0日目から31日目まで卵巣観察を行う。また生産現場においては経腟採卵牛からの胚生産およびそのウシへの人工授精による子牛生産を短期間で併用させるニーズがあることから、発情周期を乱さない経腟採卵法を検討するために、片側卵巣のみの連続経腟採卵も併せて実施し卵巣動態についての比較検討を行う(表1)。
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[成果の内容・特徴]
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吸引卵巣内に新たに出現する卵胞(>3.0mm)の平均数において、両側区、片側黄体区および片側非黄体区の間に有意な差は認められない(図1)。
- 片側卵巣のみ経腟採卵をする場合、吸引を実施しない卵巣側に優勢卵胞が存在するため、吸引卵巣内に存在する最大卵胞の長径が両側区と比較して有意に小さくなる(P<0.05、図2)。また黄体退行後に発情発現および排卵が起こり、次期黄体が早期に形成される(図3)。
- 連続6回の経腟採卵期間中(発情周期3〜20日目)においては、黄体が存在する卵巣への卵巣穿刺の有無によらず、黄体の長径に有意な差は認められない(P<0.05、図3)。
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経膣採卵により回収した卵子の体外発生能において、両側区、片側黄体区および片側非黄体区の間に有意な差は認められない(表2)。
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[成果の活用面・留意点]
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片側経腟採卵法は、供卵牛の早期受胎を希望する農家での受精卵生産に利用できる。しかし、供卵牛の早期受胎を希望しない場合は両側経腟採卵を実施することが望ましい。
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両側経腟採卵を実施する場合、処理終了後に卵巣内に優勢卵胞が存在しない状態で、供試牛の発情兆候(子宮収縮、外陰部腫脹、粘液漏出など)を認める場合があるため(7頭中2頭:28.6%)、飼養管理者への事前説明が必要と考えられる。
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[具体的データ]
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表1 試験概要および試験区分

図1 経膣採卵した卵巣における平均卵胞数(>3mm)の推移

図2 経膣採卵した卵巣における最大卵胞径(mm)の平均値の推移

図3 黄体長径(mm)の平均値の推移

表2 経膣採卵で得られた卵子の体外発生能
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[その他]
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研究課題名:牛受精卵の農家実証および関連技術の実用化試験
予算区分 :県単
研究期間 :2005-2006年度
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