高温環境下では泌乳牛血中の酸化ストレス指標が変動する
- [要約]
- 泌乳牛において夏期高温環境下では体温が上昇し、また血漿中の還元因子であるSH基、ビタミンC濃度の低下と、酸化生成物であるチオバルビツール酸反応物(TBARS)の増加がみられ、酸化ストレスが亢進している可能性がある
- [キーワード]
- 泌乳牛、酸化ストレス、直腸温度、ビタミンC、過酸化脂質、SH基
- [担当]
- 九州沖縄農研・暖地温暖化研究チーム
[代表連絡先]電話096-242-7748
[区分]九州沖縄農業・畜産草地(大家畜)、畜産草地(家畜生理・栄養)
[分類]研究・参考
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[背景・ねらい]
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高温環境下の家畜についてはその生産性が低下する要因の中に体内の酸化ストレス状態の変動が関与すると考えられている。しかし、夏季高温環境下で乳生産性が低下する泌乳牛において、環境温度とともに上昇する直腸温度と各種酸化ストレス指標の変動および各種酸化ストレス指標間の関係については不明な点が多い。そこで、泌乳牛における高温環境下の各種血中酸化ストレス指標の変動と直腸温度を含めた各種酸化ストレス指標間の関係について調べる。
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[成果の内容・特徴]
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環境温度が高い7月は環境温度が低い12月と比較して、直腸温度が顕著に高い。また、酸化ストレス指標である血漿中の還元性因子SH基濃度およびビタミンC濃度が低く、酸化生成物であるTBARS濃度が高い(図1、表1)。
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環境温度が高いことに伴う直腸温度の増加と血漿中のビタミンC濃度には負の相関関係がある(図2)。
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血漿中の還元性因子であるSH基濃度とビタミンC濃度の間には正の相関関係があり、TBARS濃度とSH基濃度との間には負の相関関係がある。また、直腸温度と血漿中のTBARS濃度には正の相関関係があり、ビタミンC濃度との間には負の相関関係がある(表2)。
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[成果の活用面・留意点]
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泌乳牛における酸化ストレスの定量的(総合的)診断指標の開発に活用できる。
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各酸化ストレス指標は新鮮血漿を用いて測定する。
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酸化ストレスと泌乳牛の夏季の疾病との関係については不明である。
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供試牛は、コーンサイレージ、イタリアンサイレージ、圧片トウモロコシ、大麦を主体としたTDN71-73%、CP14-16%のTMRを通年飽食給与されている。
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[具体的データ]
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図1 泌乳牛の直腸温度に及ぼす環境温度の影響

図2 泌乳牛の直腸温度と血中ビタミンC濃度の関係

表1 泌乳牛の酸化ストレス指標に及ぼす季節の影響

表2 各種酸化ストレス指標と直腸温度間の相関係数
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[その他]
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研究課題名:暖地・温暖地における気候温暖化等環境変動に対応した農業生産管理技術の開発
課題ID:215-a
予算区分 :気候温暖化
研究期間 :2003〜2006年度
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