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極早生ウンシュウ「いさお早生」の高品質果生産に最適な水分ストレスパターン


[要約]
極早生ウンシュウ「いさお早生」は、8月上旬までに葉の水ポテンシャルで-0.7MPa程の水分ストレスを付与させて糖度を8以上とし、その後も同程度の水分ストレスを保持させることで、9月下旬から10月上旬の収穫期に糖度11以上の高品質果実が生産できる。

[キーワード]
極早生ウンシュウ、いさお早生、水分ストレス、葉の水ポテンシャル

[担当]
佐賀果樹試・常緑果樹研究担当

[代表連絡先]電話0952-73-2275	
[区分]九州沖縄農業・果樹	
[分類]技術・普及	

[背景・ねらい]
「いさお早生」は、9月下旬から10月上旬頃に収穫できる極早生ウンシュウの新品種であり、佐賀県の有明海沿岸の産地を中心に導入が進められている。ここでは、「いさお早生」で収穫期に糖度11以上の高品質果実生産を達成するため、夏秋季の水分ストレスの付与程度および各生育ステージにおける目標品質等を明らかにする。

[成果の内容・特徴]
  1. 収穫期の糖度が11以上の「いさお早生」は、8月上旬時点で糖度が8以上となり、9月上旬以降に増糖量が「上野早生」より大きくなって、9月下旬時点で約11まで糖度が上昇する。「いさお早生」の果実酸度は、「上野早生」よりやや低い値で推移する(図1図2)。

  2. 「いさお早生」の葉の水ポテンシャルは「上野早生」より低下が緩やかで、糖度11以上の「いさお早生」では7月下旬以降に-0.6〜-0.8MPa程の値で推移する(図3)。

  3. 「いさお早生」の葉の水ポテンシャルと日増糖量の関係は、8月上旬では「上野早生」とほぼ同様な関係を示すが、9月下旬では-0.6MPa程度で日増糖量が多くなる(図4図5)。

  4. 葉の水ポテンシャルが8月に6日、9月に5日程度-0.7MPa以下となった「いさお早生」は、収穫期に糖度11以上となる(図6)。

[成果の活用面・留意点]
  1. 本成果は根域制限栽培圃場における試験で得られ、玄武岩質土壌に植栽した葉果比30程の着果量の「いさお早生」、「上野早生」を供試し、収穫期の果実階級はSM果中心であった。

  2. 一般のマルチ栽培園地でも本成果を活用できるが、8月上旬までに-0.7MPa程の水分ストレスを付与させるように、園地の乾燥条件等に応じてマルチ被覆時期等を調整する。

  3. 水分ストレス程度の判別には、果実品質の推移の他に、果実肥大や土壌水分を利用することができる。

[具体的データ]

図1 「いさお早生」および「上野早生」の果実糖度(2005、2006年の平均値)


図2 「いさお早生」および「上野早生」のクエン酸(2005、2006年の平均値)


図3 「いさお早生」および「上野早生」における半旬毎の葉の水ポテンシャルの推移(2005、2006年の平均値)


図4 8月上旬の葉の水ポテンシャルと日増糖量の関係(2005、2006年の平均値)


図5 9月下旬の葉の水ポテンシャルと日増糖量の関係(2005、2006年の平均値)


図6 各月における葉の水ポテンシャルが-0.7MPa以下の日数(2005、2006年の平均値)

[その他]
研究課題名:水分ストレスの簡易現場診断による九州産極早生温州の高糖度化技術の開発
予算区分 :国庫(高度化事業)
研究機関:2004〜2006年度


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