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トンネル栽培「幸水」のせん定指標


[要約]
トンネル栽培「幸水」において、側枝間隔を30cmとすることで、過繁茂になりにくくなる。また、予備枝を主枝1m当たり5本以上配置することで、予備枝由来の長果枝が安定して確保でき、着果量が連年安定する。

[キーワード]
ニホンナシ、幸水、トンネル栽培、せん定、側枝間隔、予備枝

[担当]
熊本農研セ・果樹研・落葉果樹研究室

[代表連絡先]電話0964-32-1723	
[区分]九州沖縄農業・果樹	
[分類]技術・普及	

[背景・ねらい]
早生ナシ「幸水」において、熊本県では、従来よりも長い長果枝をそれぞれ平行かつ過密に配置し、側枝の基部付近に予備枝(次年度の側枝候補)を多く配置するせん定法に変わりつつある。トンネル等の施設栽培においては、露地栽培よりも過繁茂防止を意識したせん定が必要であるが、これまで新しい技術に対応した指標が示されていなかった。そこで、トンネル栽培での適正な側枝間隔及び予備枝密度を明らかにする。

[成果の内容・特徴]
  1. 側枝間隔30cm区では、収量が20cm区と比較して大差なく、年による変動が小さい。側枝間隔40cm区では着果数が不足し、収量が少なくなる(図1)。

  2. 側枝間隔20cm区では過繁茂状態となり、収穫前から果そう葉の落葉が多く、収穫後に枝枯れが全側枝本数の3割程度発生する(図2)。

  3. 果実の大きさは、1側枝当たり5果前後を着果させた場合、側枝間隔が広くなるほど大きくなり、側枝間隔20cm区では2L〜4L中心、30cm区では4L〜5L中心、40cm区では4L〜6L中心となる。なお、20cm、30cm区ともにM以下の占有率はそれぞれ1.9、1.3%と低く、販売価格上問題はない。

  4. 1果重を除く果実品質(糖度、果形等)については処理間差が認められない(表1)。

  5. 予備枝の多い区で、樹体内の貯蔵養分が増加する傾向がある(図3)ことから、予備枝数の調節により樹勢をコントロールできる可能性がある。

  6. 側枝間隔を30cmとして、側枝(予備枝由来の長果枝)を毎年8割更新(2割は短果枝として残す)するためには、予備枝は主枝1m当たり最低でも5本必要となる。

[成果の活用面・留意点]
  1. 本せん定指標は、主枝・亜主枝が確立された若木または成木を対象としており、側枝(長さ1.0〜1.4m)1本当たりに4〜5個着果させ、平均果重を350g以上にすることにより、10a当たり収量3.5t以上を目標とする。

  2. 永久樹の幼木〜若木時は主枝を延長することに主眼を置き、主枝背面から出た強勢な新梢は樹形を乱す恐れがあるので予備枝として使用しない。

  3. 樹勢が低下している(1m以下の新梢が多い・単収が低い)樹では、着果数を減らすとともに、主枝1m当たり7本程度の予備枝を置くことにより、貯蔵養分を増加させ、樹勢強化を図る。

  4. 過繁茂防止のため、予備枝はなるべく主枝に近い場所に配置する。

[具体的データ]

図1 側枝間隔が1m2当たり収量に及ぼす影響


図2 側枝間隔と枝枯れ発生率との関係


表1 側枝間隔が果実品質に及ぼす影響


図3 予備枝本数と側枝の炭水化物含量との関係

[その他]
研究課題名:早生・中生ナシにおける単収増大のための樹勢及び着果安定技術の開発
予算区分 :県単
研究期間 :2002〜2005年度


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