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極早生ウンシュウ「上野早生」における高品質果生産のための土壌母材毎の土壌の含水率


[要約]
根域制限栽培「上野早生」は、土壌母材の違いにより夏秋季の葉の水ポテンシャルが花崗岩、安山岩で低下が早く、玄武岩で低下が緩やかで、-0.8〜-1.0MPa程を示した際の土壌の含水率は、玄武岩で約30%、安山岩で約25%、花崗岩で約10%の値である。

[キーワード]
根域制限栽培、上野早生、土壌母材、水分ストレス、含水率

[担当]
佐賀果樹試・常緑果樹研究担当

[代表連絡先]電話0952-73-2275	
[区分]九州沖縄農業・果樹	
[分類]技術・参考	

[背景・ねらい]
佐賀県の果樹産地は、土壌母材の異なる地域に広く分布しており、各産地で根域制限栽培に取り組む場合、培土となる土壌の水分特性等の違いから夏秋期の水管理等が異なることが予想される。ここでは、根域制限栽培の「上野早生」において、佐賀県の主要な土壌母材である玄武岩、安山岩、花崗岩質土壌を培土として、夏秋期の水分ストレス付与特性や果実品質を把握し、土壌母材毎に適切な水管理を行うためにTDR土壌水分計を用いた土壌の含水率と葉の水ポテンシャルとの関連を明らかとする。

[成果の内容・特徴]
  1. 土壌母材に共通して、8月上旬と収穫期の果実糖度には強い相関があり、8月上旬においては葉の水ポテンシャルが-0.8MPa以下を示した樹で高い日増糖量を示す(図1図2)。

  2. 7月上旬よりマルチ被覆した場合、花崗岩、安山岩で葉の水ポテンシャルの低下が早く、7月下旬頃に-0.8〜-1.0MPa程まで低下を示すが、玄武岩では低下が緩やかであり、その後の変動も小さく推移する(図3図4)。

  3. TDR法による土壌の含水率と葉の水ポテンシャルは正の相関を示し、葉の水ポテンシャルが-0.8〜-1.0MPa程を示した際の土壌の含水率は、玄武岩で約30%、安山岩で約25%、花崗岩で約10%となる(図5)。

[成果の活用面・留意点]
  1. 本成果における土壌水分は、Campbell社製TDR100を用いて、土壌母材毎にTDR法による測定値と含水率との校正式を作成し、圃場では20cm長さの測定プローブを用いて深さ0〜20cmの含水率を1樹1ヶ所測定した。

  2. TDR法による土壌の含水率の測定では、数社の測定機器が利用可能であり、より安価な機器も販売されているが、それぞれTDR法による測定値と含水率との校正式を作成する必要がある。

  3. 本成果は根域制限栽培圃場における試験によるものであり、一般のマルチ栽培園地で本成果の水分ストレスと土壌の含水率の関係を利用する場合は、根域の土壌水分を的確に測定できるように土壌水分の測定箇所を増やすなどの対応を取る。

  4. 水分ストレスの判別には土壌の含水率のみでなく、果実品質や肥大等の樹体の水分ストレス指標を加味する。

[具体的データ]

図1 各土壌母材の「上野早生」の8月上旬と10月中旬の果実糖度の関係(2005、2006年)


図2 各土壌母材の「上野早生」の8月上旬時点のLWPと日増糖量の関係(2005、2006年)


図3 2005年の各土壌母材の「上野早生」における葉の水ポテンシャルの推移


図4 2006年の各土壌母材の「上野早生」における葉の水ポテンシャルの推移


図5 2005、2006年の各土壌母材の「上野早生」における土壌水分(含水率)とLWPの関係

[その他]
研究課題名:水分ストレスの簡易現場診断による九州産極早生温州の高糖度化技術の開発
予算区分 :国庫(高度化事業)
研究機関:2004〜2006年度


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