異なる土壌pH条件下における「ヒリュウ」の樹体生育特性
- [要約]
- pH条件を異にする養液栽培において、「ヒリュウ」の根活力は、土壌pH4.5の条件下ではpH6.0の場合と比べて25%程度低下する傾向にある。また、地上部および地下部の乾物重についても、土壌pH4.5の条件下ではpH6.0の場合と比べて20%程度の生育抑制がみられる。
- [キーワード]
- ヒリュウ、pH、樹体生育
- [担当]
- 佐賀果樹試・常緑果樹研究担当
[代表連絡先]電話0952-73-2275
[区分]九州沖縄農業・果樹
[分類]技術・参考
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[背景・ねらい]
- わい性台木「ヒリュウ」は、カンキツの台木として利用すると地上部の生長抑制、着花・果安定および品質向上効果に優れることから、樹勢の旺盛な高糖系ウンシュウの台木として期待されるが、具体的な生理生態特性については不明な点が多い。そこで、養液栽培システムを利用して、異なる土壌pH条件下における「ヒリュウ」の樹体生育特性を明らかにする。
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[成果の内容・特徴]
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- 4月および6月における「ヒリュウ」のpH4.5条件下での細根の根活力(O2消費量)は、pH6.0条件下と比較して25〜30%低い傾向にある。一方、「カラタチ」のpH4.5条件下での根活力は、pH6.0条件下と同程度である(表1)。
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「ヒリュウ」の乾物重は、両土壌pH条件下において、地上部、地下部ともに、「カラタチ」より少ない(図1、図2)。
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「ヒリュウ」のpH4.5条件下での乾物重は、地上部、地下部ともに、pH6.0条件下と比較して20%程度低下し、全体的に生育が抑制される(図1)。
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「カラタチ」のpH4.5条件下での乾物重は、地下部ではpH6.0条件下と比較して20%程度低下するが、地上部ではpH6.0条件下と同程度以上である(図2)。
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[成果の活用面・留意点]
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焼成培土を充満した培養液底面循環式の養液栽培システムに、2005年4月に植え付け、同年8月より培養液のpH管理を開始し、2006年7月に解体した。
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本成果は、台木試験ではなく、実生試験により得られたものである。
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「ヒリュウ」は「カラタチ」以上に低pHの影響を受けていることから、「ヒリュウ」を台木として用いた場合には、「カラタチ」台以上に土壌の適正pH管理に努める必要がある。
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[具体的データ]
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表1 pHの違いが各台木実生の根活性に及ぼす影響

図1 pHの違いとヒリュウ実生の部位別乾物重の割合

図2 pHの違いとカラタチ実生の部位別乾物重の割合
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[その他]
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研究課題名:わい性台木「ヒリュウ」を用いた高糖系温州の高品質果安定生産技術の確立
予算区分 :県単
研究期間 :2003〜2007年度
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