晩生ニホンナシの新品種「豊里」
- [要約]
- 「豊里」は、「愛宕」に「新興」を交配して育成した晩生の赤ナシで、「新高」収穫後の10月中下旬に収穫される。糖度と酸度のバランスが良く食味良好で、貯蔵性が高い。
- [キーワード]
- ニホンナシ、新品種、豊里(ほうり)、晩生
- [担当]
- 大分農林水産研・落葉果樹担当
[代表連絡先]電話0978-37-0149
[区分]九州沖縄農業・果樹
[分類]技術・参考
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[背景・ねらい]
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大分県のナシ栽培は、栽培面積の約4割が晩生ナシで占められており、主に「新高」・「新興」・「晩三吉」の3品種が中心となっている。晩生品種は早・中生品種より食味が劣るため、近年、価格低迷が著しく、県独自の良食味の晩生種育成に対する要望が強かった。そこで、良食味晩生品種の育成を行った。
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[成果の内容・特徴]
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「豊里」は1989年に「愛宕」に「新興」を交配して得られた実生の中から糖度と酸度のバランスが良く食味が優れるものから選抜した。
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収穫期は10月中下旬で「新興」とほぼ同時期である(表1)。樹勢は中で、枝梢は長く太い。花芽の着生は短果枝、腋花芽ともに多く、短果枝の維持も容易である(図1)。1樹当たり収穫量は「新興」より多い(表1)。
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果形は、円卵形で果皮は黄赤褐色である(図2)。平均果重は750g程度で「新高」と同程度である(表2)。裂果、みつ症などの障害の発生は認められない。えそ斑点病は非発現性である。
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果肉硬度は5.4lbs程度で「新高」や「愛宕」より低く、肉質の粗密は中である。糖度(Brix)は13.5程度で他の主要晩生種に比べ高い。また、pH4.3と酸味も強いため、濃厚な食味である(表2)。貯蔵性は「新興」より高く、芯腐れ、みつ症もみられず、長期貯蔵が可能である。(表3)
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[成果の活用面・留意点]
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品種名「豊里」として2005年3月に品種登録を出願し、2005年11月に出願公表された。
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当面は大分県内のみでの普及を図る。
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晩生で大果であることから台風対策を十分に行う必要がある。
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貯蔵性が優れるので、年末の贈答向け販売が可能である。
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[具体的データ]
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表1 「豊里」及び主要晩生種の樹の特性(2005、2006年の平均)

図1 「豊里」の短果枝着生状況

図2 「豊里」の果実

表2 「豊里」及び主要晩生種の果実の特性(2002〜2006年の平均)

表3 「豊里」の常温での貯蔵性(2005年)
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[その他]
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研究課題名:落葉果樹の品種、系統選定と実用化
予算区分 :県単
研究期間 :2005〜2006年度(1989〜2006年度)
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