秋輪ギク品種「新神」のDNAマーカーによる品種識別
- [要約]
- レトロトランスポゾン配列からSTS化したDNAマーカーにより、鹿児島県育成の秋輪ギク品種「新神」と原品種「神馬」及び「神馬」の枝変わり品種等を迅速、簡便に識別できる。
- [キーワード]
- 秋輪ギク、品種識別、DNAマーカー
- [担当]
- 鹿児島バイオ研、理化学研究所・仁科センター、中央研
[代表連絡先]電話0994-62-4112
[区分]九州沖縄農業・野菜花き
[分類]技術・普及
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[背景・ねらい]
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イオンビームを用いた変異誘発により育成した秋輪ギク品種「新神」は、原品種「神馬」と比較して側枝の発生が少なく、花弁数が多くボリュームがあるといった特性を有しており、白系秋輪ギクの主力品種として期待されている。鹿児島県は「新神」の県外への栽培許諾を開始しており県外でも「新神」の栽培が増えつつあるが、種苗法に違反した栽培や種苗増殖、海外からの違法な輸入を防止するため、DNAマーカーによる「新神」の品種識別技術を開発する。
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[成果の内容・特徴]
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キクのレトロトランスポゾン配列を利用してSTS化したDNAマーカーにより、「新神」と原品種「神馬」及び「神馬」の枝変わり品種等を識別できる。
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PCRの増幅パターンは、「新神」では410bpの1本のバンドが増幅されるのに対して、「神馬」及び「神馬」の枝変わり品種等では410bpと640bpの2本のバンドが増幅される。640bpのバンドの有無を解析することにより、「新神」と他の白系輪ギク品種を識別できる(図1)。
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「新神」に再度イオンビームを照射し、低温開花性を付与した11選抜系統についても、「新神」と同様の増幅パターンを示しており(図2)、本DNAマーカーは、栄養繁殖や培養による増殖、さらには枝変わりも含めて、安定して保持されている。
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識別に要する時間は、市販のキットによるDNAの抽出からPCRの増幅パターンの解析まで6時間程度であり、AFLPやCAPS等の他の識別法と比較して迅速、簡便である。
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[成果の活用面・留意点]
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当技術は、独立行政法人理化学研究所が特許出願(特願2006-075366)しており、プライマーの配列やPCR条件等については、出願公開後、参照されたい。
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鹿児島県は理化学研究所と当技術の実施許諾契約を締結しており、当技術の利用にあたっては、鹿児島県と再実施契約が必要となる。(窓口:鹿児島県バイオテクノロジー研究所)
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[具体的データ]
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図1 DNAマーカーによる「新神」と他品種の識別

図2 「新神」由来低温開花性選抜系統の識別
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[その他]
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研究課題名:花きの優良品種育成のための変異拡大技術及び育種素材の開発
予算区分 :県単
研究期間 :2001〜2006年度
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