園芸用施設の被災要因を整理するための台風被害調査シート
- [要約]
- 台風被害調査結果をもとに、園芸用施設の被災要因を整理できる調査シートを作成する。本調査シートを利用することにより、被災施設の問題点がこれまでよりも明確になり、合理的な台風対策が可能になる。
- [キーワード]
- 台風被害、園芸用施設、台風対策、調査方法
- [担当]
- 沖縄県農研・農業システム開発班
[代表連絡先]電話098-840-8515
[区分]九州沖縄農業・野菜花き
[分類]技術・参考
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[背景・ねらい]
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台風による園芸用施設の倒壊や破損への対策を検討するには、被災要因を整理する必要がある。しかし、これまでに沖縄県内で実施されてきた台風被害の調査報告では、被害が生じた施設の種類と棟数のみを報告している例が多く、台風対策を検討するには情報が乏しかった。また、被災した施設の修復作業では、増強することなく被災以前の仕様で修復する場合も多く見られた。そのため、被災要因と対策方法を検討できるような台風被害調査シートを作成する。
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[成果の内容・特徴]
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以下にシート内の記入項目の必要性について述べる。被災した園芸用施設の傾斜方向から施設が被災した時間帯と風速が推定できる。例えば、台風0314の来襲では、宮古島のほとんどの被災施設が南もしくは南西方向に向けて倒壊していた(図1)。北および北東方向の風は、宮古島が台風の目の中に入る以前(2004年9月11日5時以前)の風向であることから、倒壊した時刻が台風が目の中に入る以前であることが推定できた。なお、時刻毎の風速は気象台の報告書から確認できる。
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台風被害の調査結果から、資材固定用ボルトの切断、妻面の変形、基礎や溶接部の破壊が確認できた。これらの被害が生じた場合は、施設を修復する前に施設の増強方法について検討する必要がある。
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ボルトの抜け落ちや破断、天窓の破壊も多数確認された。前者はワッシャーなどの取り付けにより改善が期待でき、後者は固定方法の改善が必要である場合が多い。しかし、これらの防止対策は生産者(施設を利用している方)のメンテナンス作業によって対応できる場合も多く、生産者に注意を払うように指導することで対応できる(図2)。
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施設の配置図や施設周辺の立地条件を明記することで、施設倒壊時の風の状態を推定できる。また、防風施設が存在した状況で被災した場合は防風施設の問題点も検討できる。
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[成果の活用面・留意点]
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立地条件(面積、傾斜状態など)を測定する場合は、携帯用GPSと巻尺を用いて測定する。また、園芸用施設などの高さ測定には表尺を用い、施設の傾斜角や資材の厚み、溶接部の「のど厚」測定には角度計やノギスを使用する。
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調査シートは普及指導員やJAの調査担当者が、園芸用施設の被害調査を実施する際に使用できる。
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調査シートを用いることで、台風対策の専門家に被災地の現地調査を依頼できない場合でも、被災要因や対応策を指導してもらうための情報を整理できる。
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[具体的データ]
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表1 台風被害調査用シートの作成例

図1 施設妻面の傾斜と破壊状況

図2 固定用ボルトの抜け落ち
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[その他]
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研究課題名:園芸用施設の台風被害カルテの作成
予算区分 :県単
研究期間 :2003〜2005年度
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