ネギとノビルの種間交雑による新規栄養繁殖性ネギ属野菜の作出
- [要約]
- ネギ「九条太」とノビルを正逆交配して、1mg/lBAを添加したBDS培地を用いて低湿度条件下で子房培養を行うことにより、種間雑種を作出できる。雑種の地上部はネギの形態に近く、地下部は肥大してノビルに近い形態を示す。
- [キーワード]
- ネギ、ノビル、子房培養、種間雑種
- [担当]
- 福岡農総試・バイオテクノロジー部・細胞育種チーム
[代表連絡先]電話092-924-2970
[区分]九州沖縄農業・野菜花き
[分類]研究・参考
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[背景・ねらい]
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福岡県の葉ネギ生産を振興させるため、区別性と競争力のある品種の育成が求められている。短期間でネギにこれまでにない形質を付与するためには、ネギと他のネギ属植物間での種間交雑が有効である。すでに、ネギ・アサツキの種間雑種を作出しているが、より遺伝的に遠縁関係にあるネギ属植物との種間雑種作出を図るため、滋養強壮効果が高いと言われるノビルを材料として用いる。
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[成果の内容・特徴]
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- ネギ「九条太」(Allium fistulosum L.)とノビル(Allium macrostemon Bunge)を交配後、子房培養を行い、種間雑種を正逆合わせて4系統作出した(表1)。
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子房培養の際、発芽した胚はカルス形成やガラス化を起こす傾向があるので、BDS培地に1mg/lのベンジルアデニン(BA)を添加し、低湿度条件下で培養する必要がある(図1A-B)。
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得られた雑種の葉身部の外観や空洞部分はネギの形態に近く、葉鞘部は肥大してノビルに近い形態を示す(図1C-D)。
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雑種性は、rDNAITS領域のCAPS解析から確認できる(図2)。
- 根端細胞の染色体を観察した結果、ネギは同質2倍体(2n =FF=16)、ノビルは同質4倍体(2n =GGGG=32)、雑種は異質3倍体(2n =FGG=24)である(図3)。
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[成果の活用面・留意点]
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ノビルの花芽形成を促進するためには珠芽の除去が必要である。
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本法はより遠縁のネギ属種間雑種の作出に適用できる。
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本法で得られた種間雑種は、新規ネギ属野菜あるいは育種素材として活用できる。
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[具体的データ]
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表1 子房培養によるネギとノビルの種間雑種作出経過

図1 発芽した雑種胚およびネギ、ノビル、雑種の形態的特徴

図2 CAPS解析による雑種性の確認

図3 根端細胞の染色体
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[その他]
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研究課題名:葉ネギの細胞培養による優良系統の作出
予算区分 :県単
研究期間 :2004〜2006年度
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