Navigation>>九州沖縄農業研究センター >> 研究成果情報 >> 平成18年度目次

リノレン酸の生合成を抑制した形質転換シクラメンの作出


[要約]
単離したシクラメンの耐暑性に関与する脂肪酸不飽和化酵素遺伝子(CpFAD)から作製したRNAiベクターを用いた遺伝子組換えにより、葉におけるリノレン酸含量が著しく低下した形質転換「ビクトリア」(2倍体)を作出した。

[キーワード]
シクラメン、遺伝子組換え、RNAi法、脂肪酸不飽和化酵素(FAD)遺伝子

[担当]
福岡農総試・バイオテクノロジー部・遺伝子操作チーム

[代表連絡先]電話092-924-2970	
[区分]九州沖縄農業・野菜花き	
[分類]研究・参考	

[背景・ねらい]
温暖化が進む中、シクラメンの安定生産には夏季の高温条件下でも葉焼けや生育不良が発生しにくい耐暑性品種が求められている。一方、シロイヌナズナやタバコにおいては、リノレン酸を含むトリエン脂肪酸含有量を低下させた個体で顕著に耐暑性を獲得することが明らかになっている。そこで、リノレン酸を合成する脂肪酸不飽和化酵素遺伝子(DDBJ:AB250917)をRNAi法によってノックアウトすることで、低リノレン酸の形質転換体を作出する。

[成果の内容・特徴]
  1. シクラメンから単離したCpFAD の情報を基に作製したCpFAD 7thexon RNAiベクターを導入し、「ビクトリア」(2倍体)の形質転換体を36個体獲得した。その後、正常に生育して鉢上げに成功した3個体のうち、2個体(No.15、No.31)が低リノレンの形質転換体であった(表1)。

  2. 獲得した形質転換体2個体は、葉における内在性のCpFAD の発現が非形質転換体と比較して、ほぼ完全に抑制された(図1)。

  3. 獲得した形質転換体2個体の葉におけるリノレン酸含量は、非形質転換体と比較して著しく低下した(図2)。

[成果の活用面・留意点]
  1. 形質転換体の耐暑性と環境に対する安全性については、次世代種子の実生を用いて閉鎖温室、特定網室、隔離圃場で確認する。

  2. 獲得した形質転換体では、リノレン酸から合成されて花粉の形成に必要なジャスモン酸の減少によると考えられる花粉形成の阻害が認められる。そのため次世代種子は、栽培種の花粉を交配することで獲得する必要がある。

[具体的データ]

表1 RNAiによる形質転換「ビクトリア」の作出経過


図1 非形質転換体と形質転換体の葉におけるCpFAD mRNAの発現確認


図2 非形質転換体と形質転換体の葉におけるリノレン酸含量

[その他]
研究課題名:遺伝子導入技術の確立と形質転換体の作出
予算区分 :県単
研究期間 :2001〜2005年度


目次へ戻る