深刈り更新直後における石灰窒素入り複合肥料の施用効果
- [要約]
- 深刈り更新直後に石灰窒素入り複合肥料を施肥窒素量で10kg/10a程度施用すると土壌中のアンモニア態窒素含量が高く推移し、翌年の生葉収量が増加する。また施肥量も窒素量で10kg/10a程度ならば、土壌中のpHや石灰含量の高まりも少なく施用上の問題がない。
- [キーワード]
- チャ、深刈り、石灰窒素、アンモニア態窒素、収量性、硝化抑制
- [担当]
- 鹿児島農総セ・茶業部・栽培研究室
[代表連絡先]電話0993-83-2811
[区分]九州沖縄農業・茶業
[分類]技術・参考
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[背景・ねらい]
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二番茶後の深刈り更新直後に施肥窒素の新芽への分配は抑制されることが示唆されている。また、茶園更新後の多雨による地下への浸透水量も多いことが明らかになり、茶園更新時には新しい施肥管理技術が必要と考えられている。そこで、硝化抑制効果のある石灰窒素を含む複合肥料を用いた深刈り更新直後の施肥法について検証する。
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[成果の内容・特徴]
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深刈り直後の窒素量10kg/10a程度の石灰窒素入り複合肥料の施用により、当年の秋整枝量と翌年の一番茶収量は高まり、品質の低下もない(表1、表2)。
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石灰窒素入り複合肥料は、刈り落とした枝葉の分解を促進する(図1)。
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深刈り直後の窒素量10kg/10a程度の石灰窒素入り複合肥料の施用により、その後の硝酸化成が抑制されるため土壌中のアンモニア態窒素含量は高く推移する(図2)。
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石灰窒素入り複合肥料を施用すると土壌pHは高めに推移し、土壌中のカルシウム含量も高く推移するが、更新処理時における窒素量10kg/10a程度の施用は問題ない(図3、図4)。
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[成果の活用面・留意点]
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供試茶園は、乗用型摘採機(曲率半径300cm)で管理している厚層多腐植質黒ボク土の「やぶきた」成園である。
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年間施肥窒素量50kg/10aのうち処理区に供試した有機配合肥料(14-7-7)と石灰窒素入り複合肥料(15-1-0、うち石灰窒素性窒素成分は9.5%)は、深刈り直後の平成16年6月18日に、窒素量で10kg/10aになるように施用した結果である。
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深刈り直後の石灰窒素入り複合肥料の施用によりその後の土壌pHと土壌中カルシウム含量が高くなるため、深刈り当年は苦土石灰等による酸度矯正を控える。
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[具体的データ]
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表1 処理当年の秋整枝量(平成16年)と翌年の収量(平成17年)(kg/10a)

表2 処理翌年の荒茶品質と化学成分値(化学成分値:乾物%)

図1 刈り落とした枝葉の分解程度の推移

図2 土壌中アンモニア態窒素の推移

図3 土壌pH(H2O)の推移

図4 土壌中カルシウム含量の推移
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[その他]
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研究課題名:多様な品種特性に適応した環境保全型栽培技術の確立
予算区分 :県単
研究期間 :2004〜2008年度
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