土着天敵を活用したカキ害虫のIPM体系
- [要約]
- 天敵に悪影響の少ない殺虫剤とフジコナカイガラムシの土着天敵を活用したカキのIPM体系は、慣行防除体系に比べて殺虫剤の年間散布回数が少なく薬剤費も安い上にフジコナカイガラムシに対して高い防除効果がある。
- [キーワード]
- カキ、フジコナカイガラムシ、天敵、IPM、防除体系
- [担当]
- 福岡農総試病害虫部・虫害チーム
[代表連絡先]電話092-924-2938
[区分]九州沖縄農業・病害虫
[分類]技術・普及
-
[背景・ねらい]
-
これまでの研究により、フジコナカイガラムシ(以下、フジコナ)には有力な土着天敵が存在することを明らかにし(福岡農総試研報23号)、主要な寄生蜂の特性を解明した(平成16年度福岡県農業関係試験研究の成果)。また、最も発生が多い天敵であるフジコナカイガラクロバチ(以下、クロバチ)を用いてカキで使用する主な薬剤が天敵に及ぼす影響を明らかにした(福岡農総試研報25号)。これらの成果を生かして、土着天敵を活用するカキのIPM体系を開発した。そこで、IPM体系の効果を現地圃場で実証しながら改良し、実用的な体系を構築する。
-
[成果の内容・特徴]
-
-
本IPM体系はカキで最も問題となるフジコナの密度抑制を主目的とした体系で、フジコナの寄生蜂に影響が少ない薬剤を主体に構成したものである。6月のフジコナ第1世代までは薬剤防除で低密度に抑え、第2世代以降は土着天敵の働きで増加を抑制することにより収穫果の被害軽減を図るものである(図1)。
-
カキ主要産地内の現地農家圃場で3年間実施したIPM体系において、収穫果実のフジコナ被害は、いずれの年も慣行防除体系に比べて低い(図2)。また、フジコナ以外の害虫による被害は慣行防除区と大差がない(データ略)。
-
IPM体系の殺虫剤散布回数は年により差があるが、慣行防除体系より2〜4回少なく(図3)、殺虫剤の経費は10a当たり2,000円〜6,000円安い(データ略)。
-
IPM体系における第2世代以降のフジコナ若齢幼虫に対するクロバチの寄生率は、果樹カメムシ類が多発した2005年を除き約70%と慣行防除体系より高い(表1)。
-
[成果の活用面・留意点]
-
-
産地の防除暦改善に活用する。
-
第2世代以降に天敵を活用して被害防止効果をあげるには、6月までの薬剤防除により第1世代のフジコナ密度を十分下げておく必要がある。
-
7、8月に果樹カメムシ類に対する防除等で合成ピレスロイド系やネオニコチノイド系殺虫剤を多用すると、その悪影響により天敵は活動を阻害される。
-
カキで使用される殺菌剤は、天敵に悪影響を及ぼさない。
-
[具体的データ]
-

図1 土着天敵を活用するカキのIPM体系

図2 IPM体系におけるフジコナカイガラムシによる被害果率

図3 IPM体系における殺虫剤散布回数

表1 IPM体系における第2世代以降のフジコナカイガラムシ幼虫に対するフジコナカイガラクロバチの寄生率
-
[その他]
-
研究課題名:天敵等を利用したカイガラムシの環境保全型制御技術の開発
予算区分 :指定試験
研究期間 :2003〜2005年度
目次へ戻る