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イネいもち病の育苗期感染苗による本田持ち込みと種子消毒の抑制効果


[要約]
イネいもち病は、育苗期感染苗の移植によって本田に持ち込まれる。ベンレート水和剤1,000倍を混用した種子消毒は、苗いもちと育苗期感染に高い効果を示し、本田持ち込みによる葉いもちの初期発生を抑制する。

[キーワード]
イネ、いもち病、種子消毒、ベンレート水和剤、防除効果

[担当]
佐賀農業セ・土壌環境部・病害虫農薬研究担当

[代表連絡先]電話0952-45-2141	
[区分]九州沖縄農業・病害虫	
[分類]技術・普及	

[背景・ねらい]
イネいもち病は種子伝染性病害であり、本病を総合的に防除する上で保菌していない健全な種子の使用や種子消毒の徹底が重要である。しかしながら、九州で普及している本病を対象とした長期残効型箱施薬剤の防除効果の不安定化や箱剤耐性菌発生の要因として、保菌種子の使用と不完全な種子消毒が指摘されている。そこで、種子消毒の育苗期感染抑制効果と本田における葉いもちの発生との関係を明らかとし、本田初期の菌密度低下対策を検討する。

[成果の内容・特徴]
  1. イネいもち病は、移植時の苗での発生が見られなくても、育苗期感染苗を移植することで本田に持ち込まれる(表1表2)。

  2. ベンレート水和剤1,000倍を慣行薬剤(テクリードCフロアブル200倍)に混用する種子消毒(24時間浸漬)は、苗いもちと育苗期感染に高く安定した効果を示す(表1)。

  3. 本混用種子消毒は、育苗期感染苗による本田へのいもち病の持ち込みを抑制し、本田の初発遅延や初期の葉いもち発生抑制効果を示す(表1表2)。

[成果の活用面・留意点]
  1. いもち病常発地域における防除対策に活用できる。

  2. ベンレート水和剤(ベノミル50%)は、イネいもち病に対し、高濃度短時間処理(30〜50倍、10分間)と低濃度長時間処理(500〜1,000倍、12〜24時間)の浸漬処理の登録を有する。

  3. ベノミル水和剤は、イネ馬鹿苗病において耐性菌の発生が認められている。本耐性菌には、DMI剤(テクリードCフロアブル等)が有効である。

  4. 本防除効果は、主に種子消毒による種子保菌率低下に基づく効果であり、育苗期、本田期まで薬剤の直接的な効果は持続しない。育苗期や本田期に他圃場からの飛び込みなどによって、発病の進展がみられる場合には、すみやかに茎葉散布剤等による防除を行う。

[具体的データ]

表1 イネ種子消毒処理の苗いもちと育苗期感染に対する防除効果


表2 イネ種子消毒処理の本田期葉いもちに対する防除効果

[その他]
研究課題名:イネ・ムギ種子伝染性病害虫の環境保全型制御技術と発生予察技術の確立
予算区分 :国庫
研究期間 :2005〜2007年度


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