園周囲設置の着脱式防風ネットへの殺虫剤散布による果樹カメムシ類の被害抑制
- [要約]
- 果樹カメムシ類の大量飛来時に殺虫剤を散布した防風ネットを園周囲に設置すると、園内への侵入数と果実の吸汁被害を無設置園の半分以下に抑制できる。また、直管パイプを土台としさらに細い直管パイプを挿入してボルトで固定することで、着脱が容易で安価な支柱を設置できる。
- [キーワード]
- カンキツ、果樹カメムシ類、ジノテフラン水溶剤、防風ネット、簡易設置法
- [担当]
- 佐賀果樹試・病害虫研究担当
[代表連絡先]電話0952-73-2275
[区分]九州沖縄農業・病害虫
[分類]技術・参考
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[背景・ねらい]
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果樹カメムシ類が園地に大量飛来する場合、現行の薬剤防除のみでは十分な被害防止効果は得られない。一方、合成ピレスロイド剤含浸ネットの設置による殺虫および吸汁抑制効果が明らかになっているので、今回、速効性に優れるネオニコチノイド系剤であるジノテフラン水溶剤を散布した防風ネットの設置による侵入および被害抑制効果について検討する。
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[成果の内容・特徴]
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温州ミカン園の周囲にジノテフラン水溶剤1、000倍を散布した防風ネット(幅2.5m)を3mの高さに設置することで(図1)、園外から大量飛来してくる果樹カメムシ類の侵入数を20〜40%程度に抑制できる(表1)。また、薬剤散布による侵入抑制期間は3〜4日程度と考えられる(データ略)。
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果実被害抑制効果について、薬剤散布のみの場合は無散布と比較して園内の果実の口針鞘数は1/2程度に減少する。薬剤散布+薬剤散布した防風ネットを設置した場合は、薬剤散布のみと比較すると果実の口針鞘数を1/3程度に、薬剤無散布と比べると1/6程度(約10本/果実)まで抑制できる(表2)。
- 直管パイプ(直径38mm、長さ1.2m)を地中に60cmに打ち込んで土台とし、そこに一回り細い直管パイプ(直径31mm、長さ3m)を挿入してボルトで固定することで、着脱が容易な支柱を設置できる(図2)。本設置法は、慣行に比べて経費では約1/3、設置時間では約1/4(16時間/人)となる極めて簡易な方法である。
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[成果の活用面・留意点]
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果樹カメムシ類の大量飛来時の侵入抑制技術として使用できる。
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薬剤散布を行う場合は園周辺だけではなく、園内にも行う。ただし、ジノテフラン水溶剤のカンキツの果樹カメムシ類への登録は2000倍である。
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防風ネットのみに薬剤を散布する場合は登録上の問題はない。
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[具体的データ]
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図1 園周囲の防風ネットの設置状況(左)、薬剤散布防風ネット下に落下した多数のカメムシ類(右)

表1 樹冠下に設置したコンテナ内の果樹カメムシ総死虫数の推移

表2 各区の果実に対するカメムシ類の口針鞘数1)

図2 直径38mmの直管パイプを土台とし、直径31mmの直管パイプを挿入してボルトで固定する簡易設置法
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[その他]
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研究課題名:防風ネット設置による果樹カメムシ類の果樹園内への侵入防止技術の確立
予算区分 :県単
研究期間 :2004〜2006年度
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