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省力的に母集団を推定する中庸(メデイアン)サンプリング法


[要約]
正規分布母集団からサンプリングする際、目的形質の大小優劣が明瞭な場合は、ランダムに選ばれた株(例えば、株単位で構成されていると仮定)とその近傍2株(計3株)のうちの中庸株(メデイアン)を選ぶことで、母集団推定に必要な株数をランダムサンプリングに比べ大幅に減らすことができる。

[キーワード]
サンプリング、母集団推定、省力、メデイアン、ランダム中庸法

[担当]
九州沖縄農研・難防除害虫研究チーム

[代表連絡先]電話096-242-7732	
[区分]九州沖縄農業・病害虫、九州沖縄・水田作、共通基盤(病害虫)	
[分類]研究・参考	

[背景・ねらい]
出来るだけ少ないサンプルサイズで母集団が推定できれば圃場調査等が省力化できる。特に、サンプルの後処理が煩雑な場合や保管場所に限りがある場合はメリットが大きい。例えば母集団が株単位で構成されていて、一見して目的形質の株間の大小優劣関係が明瞭な場合の母集団の平均値と分散を、できるだけ少ないサンプルサイズで推定するひとつの方法を提案する。

[成果の内容・特徴]
  1. 株単位での目的形質の大小が一見して明らかな場合(例えば、大豆株の草丈、着莢数、子実重等、中庸個体の判別のための労力が小さい場合)、ランダムに選ばれた株とその近傍(例えば前後)2株(計3株)のうち、中庸の株(メデイアン)をサンプリングする(ランダム中庸法)ことで、ランダムサンプリングに比べ、場合によっては(地力むらなどがなく近傍株間の形質に相関がない場合)半分以下の抽出数で、正規分布する母集団の平均値を推定することができる(図1)。この相対的な省力効果は、目標の精度(図2)や母集団の平均値(図省略)、分散(図3)に依存しないで一定(約45%)であり正規分布する母集団で普遍性を持つ。

  2. 近傍の株間で形質差が小さい場合、中庸の株を目視では選べない(判別限界:母集団の平均値の10%と仮定)。そのような場合、適当に選んでも(修正ランダム中庸法:株間の形質差が判別限界以内の場合は当該株をランダムに抽出)省力効果はほとんど減じない(図1図2)。

  3. ランダム中庸法のサンプルの不偏分散は、ランダム法の不偏分散(母集団の分散の期待値)と一定の関係がみられ、約45%に収斂する(図4図5)。この関係から、ランダム中庸法でも母集団の分散を推定することができる。修正ランダム中庸法においても、母集団の標準偏差と判別限界との比率(判別限界比=標準偏差/判別限界)が1.5以上の場合は、不偏分散がランダム法の不偏分散の概ね50%前後の値をとり、母集団分散の推定が可能である(図5)。

  4. 以上のシミュレーション結果から、ランダム中庸法または修正ランダム中庸法によって、ランダム抽出に比べて大幅に少ない抽出株数で母集団の平均値と分散を推定することができる。

[成果の活用面・留意点]
  1. 農業、工業等の分野で母集団が正規分布する様々な形質調査の省力化ができる。

  2. 近傍の株間の形質に相関がある場合、省力効果は減じる。なお、ランダム中庸法では必ずしも近傍の株を二次抽出単位にする必要はなく、近傍株間での中庸株の選抜はランダム中庸法の一活用法である。

[具体的データ]

図1 抽出本数と標本平均値の合格率(母集団平均値±5%以内を合格とする)との関係


図2 合格率と中庸法の相対労力(ランダム抽出の必要サンプルサイズを100とした時の各法の必要サンプルサイズ)との関係


図3 母集団(平均58.6)の標準偏差が異なる場合の中庸法の相対労力(合格率90%の場合を示すが、他の合格率でも同じ)


図4 ランダム抽出とランダム中庸法の不偏分散の関係


図5 判別限界比と中庸法の不偏分散の平均(±S.D.)

[その他]
研究課題名:暖地における長距離移動性、新規発生等難防除害虫の発生メカニズムの解明と総合防除技術の開発
課題ID:214-h
予算区分 :交付金・基盤
研究期間 :2004〜2006年度


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