少雨条件における灰色低地土の冬作キャベツ畑の施肥窒素溶脱の実態
- [要約]
- 少雨条件において灰色低地土の水田地帯の露地畑で冬作キャベツを栽培すると、施肥窒素は収穫後、降雨に伴い多量に溶脱する。この場合、収穫期までに施肥窒素の6割程度が無機態窒素として土壌残存し、作物吸収が2割程度で溶脱はほとんどない。
- [キーワード]
- 灰色低地土、キャベツ、施肥窒素、硝酸態窒素、溶脱
- [担当]
- 福岡農総試・土壌・環境部・環境保全チーム
[代表連絡先]電話092-924-2939
[区分]九州沖縄農業・生産環境(土壌肥料)
[分類]技術・参考
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[背景・ねらい]
- 露地野菜畑では、施肥窒素は速やかに硝酸態窒素に変化する。硝酸態窒素は水溶性であり降雨や灌漑水によって容易に地下水に移行する。通常、灰色低地土は火山灰土に比べて溶脱の危険性が低いといわれている。しかし、灰色低地土においても露地野菜が集約的に栽培されている場合地下水の硝酸態窒素汚染が懸念される。
- そこで、灰色低地土である筑後川流域水田地帯の露地野菜畑における施肥窒素の溶脱の実態を明らかにする。
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[成果の内容・特徴]
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少雨条件においてパンライシメータ法(図1)により冬作キャベツ畑の土壌浸透水をモニタリングした結果、施肥由来の硝酸態窒素は収穫期(2月上旬)以降降雨に伴い根域外に多量に溶脱する(図2)。
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施肥窒素は収穫期までに2割程度作物に吸収されるが溶脱はほとんどなく、その結果、6割程度が無機態窒素として土壌中に残存する(表1)。
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収穫後キャベツ残渣を持ち出し裸地状態のまま放置した場合、土壌残存窒素は梅雨期間中までに10a当たり10kgが溶脱により消失する(図2)。これは施肥窒素量の3割以上に相当する。
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[成果の活用面・留意点]
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細粒灰色低地土の比較的排水良好な露地野菜畑における環境保全型施肥技術の指導資料として活用できる。
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本成果における栽培期間(2005年9月〜2006年2月)の平均気温は平年比102と平年並み、降水量は同76と少雨条件であった。また、調査期間(2005年9月〜2006年6月)の降水量は平年比95とやや少なかった。
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溶脱量や土壌残存無機態窒素量は降水量および降雨強度等によって変動する。
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少雨条件下では収穫後の施肥窒素の土壌残存量が多いので、土壌診断を実施した上で次の作付けを速やかに行う必要がある。
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パンライシメータ法で捕集できる浸透水は主に、土壌中の粗大孔隙や亀裂内を流れる水である。これは深さ60cm(採水パンの埋設位置)を通過する全浸透水の一部である。
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[具体的データ]
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図1 パンライシメータ法による土壌浸透水のモニタリングの様子

図2 1日当り降水量と施肥由来の硝酸態窒素溶脱量(2005年)

表1 施肥区の収量および収穫期における施肥由来窒素の収支(kg/10a)
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[その他]
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研究課題名:露地野菜畑における窒素収支の解明
予算区分 :国庫(土壌保全)
研究期間 :2004〜2005年
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