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オゾンガス消毒が土壌化学性およびホウレンソウの生育へ及ぼす影響


[要約]
オゾン処理直後の土壌は、土壌の種類に拘わらずpHの急激な低下が起こり無機態窒素が増加する。特にアンモニア態窒素は処理前に比べておおよそ30倍増加するが、速やかに硝酸態窒素へと硝化されるため、ホウレンソウの生育への影響は見られない。

[キーワード]
オゾン、土壌消毒、硝酸化成、無機態窒素

[担当]
熊本農研セ・生環研・土壌肥料研究室

[代表連絡先]電話096-248-6448	
[区分]九州沖縄農業・生産環境(土壌肥料)	
[分類]研究・参考	

[背景・ねらい]
土壌病害の防除薬剤として広く使用されてきた臭化メチルが2005年に使用禁止となり、代替技術の開発が強く望まれている。オゾンは医療や工業分野において殺菌や脱臭・脱色あるいは有機物の除去などに用いられているガスであるが、強力な酸化作用があるため臭化メチルの代替化学物質として注目されている。
しかし、農業分野への適用例はなく、作物栽培に利用した場合、作物の生育ならびに周辺環境に及ぼす影響が懸念される。このため、オゾンガス消毒が土壌環境および作物の生育に与える影響について明らかにする。

[成果の内容・特徴]
  1. オゾンガス濃度17500mg/Lで処理した土壌では、土壌の種類に拘わらずpHは大きく低下し、ECおよび無機態窒素が増加する(表1)。

  2. 無機態窒素は、オゾン処理直後、アンモニア態窒素が処理前の約30倍となるが、これらは速やかに硝酸化成作用を受け硝酸態窒素に移行する(図1)。

  3. オゾン処理直後の土壌に乾土100g当たり23mg相当窒素量を硫酸アンモニウムとして施用した場合、硝酸態窒素の生成が起こるまでの日数は未処理土壌に比べて遅い。しかし、1週間後には未処理土壌と同程度の硝酸態窒素量を生成するまで回復する(図2)。

  4. 好硝酸性野菜であるホウレンソウをオゾン処理土壌に播種した場合、未処理土壌に比較して初期生育はオゾン処理土壌が劣るものの、生育後半は処理土壌がむしろ上回る傾向にあり、栽培跡地土壌の化学性にも差はほとんど見られない(図3)。

[成果の活用面・留意点]
  1. オゾンガス処理は、12cmポリポットに土壌(約700mL)を充填し、土壌表面から3cmの深さにガス噴口ノズル(ニードル管Φ1mm)を挿入する土中ノズル供給方式を用い、オゾンガス濃度17500mg/L、ガス流量3L/分、供給時間15分間の条件で行った。

  2. ホウレンソウ栽培は、縦55cm×横25cm×高さ20cmのコンテナに黒ボク土を充填し、両処理土壌にN:P2O5:K2O=20:20:20kg/10aとなるようCDU化成肥料を全層施肥した。

[具体的データ]

表1 オゾン処理が土壌の化学性に及ぼす影響


図1 オゾン処理が土壌中無機態窒素の形態変化に及ぼす影響(黒ボク土)


図2 オゾン処理土壌の硝酸化成力の変化(黒ボク土)


図3 オゾン処理がホウレンソウの生育に及ぼす影響(黒ボク土)

[その他]
研究課題名:オゾン・一酸化窒素ラジカルを利用した土壌殺菌法の実用化
予算区分 :高度化事業
研究期間 :2003〜2005年度


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