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窒素肥効率に基づく家畜ふん堆肥の飼料畑利用下での亜酸化窒素排出係数


[要約]
窒素肥効率を勘案した飼料作物の全量家畜ふん堆肥栽培および化学肥料との併用栽培における亜酸化窒素の年間排出係数は、0.15〜0.32%で、IPCCデフォルト値(1.25%)を超えることがなく、化学肥料栽培における0.24〜0.53%に比べて必ずしも高くない。

[キーワード]
飼料作物、家畜ふん堆肥、窒素肥効率、亜酸化窒素、排出係数、IPCC

[担当]
鹿児島農総セ・生産環境部

[代表連絡先]電話099-245-1156	
[区分]九州沖縄農業・生産環境(土壌肥料)	
[分類]研究・参考	

[背景・ねらい]
世界の水田における窒素質肥料由来の亜酸化窒素の平均排出係数は0.31%で、IPCC(気候変動に関する政府間パネル:Intergovernmental Panel on Climate Change)デフォルト値(1.25%)に比べて著しく低いことが明らかにされている。現在、環境と調和した持続的な農業生産を推進するため、家畜ふん堆肥は化学肥料代替資材として利用されつつある。しかし、家畜ふん堆肥の施用による亜酸化窒素の発生動態等を解析した報告は少ないため、これらのデータ蓄積が重要である。
そこで、トウモロコシーイタリアンライグラス栽培体系の飼料畑において、窒素肥効率を勘案した豚ぷん堆肥、鶏ふん堆肥の単用あるいはこれらと化学肥料との併用による亜酸化窒素の排出係数を明らかにする。

[成果の内容・特徴]
  1. 豚ぷん堆肥、鶏ふん堆肥を単用あるいはこれらと化学肥料を併用してトウモロコシ、イタリアンライグラスを栽培した場合、乾物収量は化学肥料だけで栽培した場合と変わらない(データ省略)。

  2. 堆肥の単用あるいは化学肥料と併用した栽培の亜酸化窒素発生量は、基肥施用から約2週間までが多く、それ以降は少ない。化学肥料栽培では、ほぼ同様の傾向であるが、追肥を伴う発生が加わる(図1図2)。

  3. 2004年に豚ぷん堆肥を施用した栽培期間の積算亜酸化窒素発生量は、化学肥料栽培に比べて少ないが、2005年に鶏ふん堆肥を施用した栽培では多い。このことから、施用堆肥の畜種や気温、降水量の違いによる土壌中の窒素無機化や土壌水分の変動によって亜酸化窒素発生量は異なると推察される(表1表2)。

  4. 家畜ふん堆肥を施用した栽培、化学肥料栽培ともに、亜酸化窒素の排出係数は1.25%を超えない。化学肥料栽培の年間排出係数は2004年が0.53%、2005年が0.24%である。これに対して、家畜ふん堆肥を施用した栽培の排出係数は、2004年が0.15〜0.30%、2005年が0.22〜0.32%であり、化学肥料栽培に比べて必ずしも高くない(表1)。

[成果の活用面・留意点]
  1. 南九州の多腐植質黒ボク土におけるトウモロコシ、イタリアンライグラス栽培体系の飼料畑における亜酸化窒素発生の動態である。

[具体的データ]

図1 2004年における飼料作物栽培期間の亜酸化窒素発生量の推移


図2 2005年における飼料作物栽培期間の亜酸化窒素発生量の推移


表1 飼料作物栽培期間の積算亜酸化窒素発生量および排出係数


表2 2004年と2005年の飼料作物栽培期間の平均気温と積算降水量

[その他]
研究課題名:環境負荷低減農業技術確立実証事業
予算区分 :委託試験
研究期間 :2002〜2006年度


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