水稲品種「にこまる」では「ヒノヒカリ」より穂揃期の茎のNSCが多く登熟が良好である
- [要約]
- 水稲品種「にこまる」では、「ヒノヒカリ」に比べて穂揃期の茎の非構造性炭水化物(NSC)が多く、登熟期にこの炭水化物を穂へ転流することで、高温・寡照条件においても登熟が良好となり多収となる。
- [キーワード]
- イネ、寡照、高温登熟、にこまる、非構造性炭水化物、ヒノヒカリ
- [担当]
- 九州沖縄農研・暖地温暖化研究チーム
[代表連絡先]電話0942-52-3101
[区分]九州沖縄農業・水田作、作物
[分類]研究・参考
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[背景・ねらい]
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近年、暖地における一等米比率や作柄が低下しており、その一因として夏季の高温や寡照が挙げられている。このため、高温・寡照条件でも玄米品質・収量が低下しにくい品種および栽培管理法の開発が喫緊の課題となっている。本研究では、近年育成された「にこまる」が普及品種「ヒノヒカリ」より登熟良好である要因を、穂揃期の茎の非構造性炭水化物(NSC)と登熟期の乾物生産特性の点から明らかにする。
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[成果の内容・特徴]
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「にこまる」では「ヒノヒカリ」に比べて、穂揃期の茎重が大きく、茎のNSC濃度も高いために穂揃期の茎のNSC含量が多い(表1)。
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「にこまる」では「ヒノヒカリ」に比べて、登熟期間の乾物生産量が少ないが、登熟前半における茎重と茎内のNSC含量の減少が著しく(図1)、穂揃期に茎に貯めているNSCを転流することで穂重増加を確保しているとみられる。
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「にこまる」では「ヒノヒカリ」に比べて、ほぼ同様の全籾数を着生しているが、高い登熟歩合と千粒重により7〜8%多収となる(表1)。
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「にこまる」の玄米の検査等級は3ヶ年平均で「ヒノヒカリ」より高く(表1)、特に高温で発生が多くなる基部未熟粒歩合が「ヒノヒカリ」より「にこまる」で少ない。また、2006年のように登熟中期に激しい台風害を受けた年でも、「にこまる」では「ヒノヒカリ」よりくず米重が少なく登熟度が高くなり、登熟全体が優れる。
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穂揃期の茎に蓄積されているNSCが「ヒノヒカリ」より「にこまる」で多いことが、高温年や寡照年においても「にこまる」の登熟が優れることと密接に関連していると推察される(図2)。
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[成果の活用面・留意点]
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高温・寡照条件でも登熟が良好となる品種の開発に活用できる。
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[具体的データ]
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表1 「にこまる」と「ヒノヒカリ」の穂揃期の茎重・NSCおよび収量・収量構成要素・玄米品質

図1 穂揃期から成熟期にかけての部位別乾物重の推移(2005年)

図2 穂揃期の茎における一籾あたりのNSCと登熟度との関係
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[その他]
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研究課題名:暖地・温暖地における気候温暖化等環境変動に対応した農業生産管理技術の開発
課題ID:215-a
予算区分 :交付金・基盤
研究期間 :2004〜2007年度
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