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サツマイモでん粉廃液から調製したタンパク質とペプチドの成分組成と機能性


[要約]
サツマイモでん粉廃液からアミノ酸スコアが高いタンパク質を単離できる。タンパク質にはトリプシンインヒビター活性があり、動物実験で血糖値の低減傾向を示す。酵素処理で得られたペプチドはアンジオテンシンI変換酵素を阻害し、動物実験で血圧低減効果を示す。

[キーワード]
サツマイモ、抗高血圧、抗糖尿病、でん粉廃液、タンパク質、ペプチド

[担当]
九州沖縄農研・九州バイオマス利用研究チーム、機能性利用研究チーム

[代表連絡先]電話0986-24-4278	
[区分]九州沖縄農業・畑作、流通加工、バイオマス	
[分類]技術・参考	

[背景・ねらい]
サツマイモでん粉製造工程において排出される廃液中には、β-アミラーゼやトリプシンインヒビターなどの有用タンパク質が含まれている。塊根タンパク質中の約5%を占めるβ-アミラーゼは酵素製剤としての利用が検討されているが、残りのタンパク質(タンパク質残渣)の有効利用方法は確立されていない。そこで本研究では、タンパク質残渣の有効利用を目指し、タンパク質残渣およびその酵素分解物(ペプチド)の特性と機能性効果を検討する。

[成果の内容・特徴]
  1. タンパク質残渣中のタンパク質含量は52.6%であり(表1A)、アミノ酸スコアはコガネセンガン由来で98、シロユタカ由来で93と優れ、トリプシンインヒビター活性を有する(表1B)。

  2. タンパク質残渣を投与した糖尿病モデルラットでは、血糖値上昇が抑制される傾向を示す(図1)。

  3. タンパク質残渣を効率よく分解する3種のプロテアーゼにより調製されたペプチドは、アンジオテンシンI変換酵素(ACE)阻害活性(IC50:18.2μg/ml)を示す(表2)。

  4. ペプチドの投与は、高血圧自然発症ラットの血圧を投与量依存的に有意に降下させる(図2)。

  5. 強いACE阻害活性を示す画分より単離したペプチド(I-T-P:イソロイシン‐トレオニン‐プロリン)は比較的高いACE阻害活性を示す(表2)。

[成果の活用面・留意点]
  1. 本成果はサツマイモでん粉や健康食品を扱う企業等により活用できる。

  2. タンパク質残渣は、高いアミノ酸スコアを活かして栄養補助食品や飼料などに利用できる。また、糖尿病予防のための機能性食品素材としての利用が期待できる。

  3. ペプチドは、高血圧予防のための機能性食品素材としての利用が期待できる。

  4. タンパク質残渣は、サツマイモを無水磨砕後、でん粉を分離した廃液から等電点沈殿によりβ-アミラーゼを分離回収した残渣である。

[具体的データ]

表1 タンパク質残渣の成分組成(A)およびアミノ酸スコアとトリプシンインヒビター活性(B)


図1 タンパク質残渣による糖摂取後の血糖値上昇抑制作用


図2 ペプチドによる高血圧自然発症ラットに対する血圧降下作用


表2 サツマイモペプチドと単離ペプチドのACE阻害活性

[その他]
研究課題名:暖地における畑作物加工残さ等地域バイオマスのカスケード利用・地域循環システムの開発
課題ID:411-d
予算区分 :委託プロ(バイオリサイクル)
研究期間 :2003-2006年度


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