海苔給与による採卵鶏の免疫力増強とカロテノイド類やヨウ素強化卵の作出
- [要約]
- 廃棄されている海苔を採卵鶏用飼料として活用することで、海苔に多く含まれる成分であるカロテノイド類やヨウ素が卵黄へ多く移行し付加価値鶏卵の生産が可能となる。また、鶏体の自然免疫や獲得免疫に作用し、異物排除能が高まり強健鶏が作出できる。
- [キーワード]
- 採卵鶏、色落ち海苔、β-カロテン、ヨウ素、自然免疫、獲得免疫
- [担当]
- 佐賀県畜産試験場・中小家畜部・養鶏研究担当
[代表連絡先]電話0954-45-2030
[区分]九州沖縄農業・畜産草地(豚・鶏)
[分類]技術・普及
-
[背景・ねらい]
- 近年、国内外の養鶏産業において高病原性鳥インフルエンザ等の鶏病が発生し、大きな問題となっており、鶏の抗病性を高める技術の開発が望まれている。また、消費者の「食」に対する安全・安心と健康志向の高まりから良質な鶏卵の生産が求められている。
- そこで、廃棄されている海苔に含まれている様々な機能性成分に着目し、飼料として活用することで、鶏の免疫機能の強化を図るとともに、海苔由来の成分を多く含む鶏卵を生産するための飼料を開発する。
-
[成果の内容・特徴]
-
-
色落ちのために商品として流通せずに廃棄される海苔(色落ち海苔)を5.0mm以下の粉砕片として市販配合飼料に1.5%添加給与しても、産卵率に遜色なく(表1)、卵黄中のカロテノイド類(βーカロテン、ルテイン、ゼアキサンチン)やヨウ素の含量を高めることができる(表2)。
-
単球・マクロファージが異物に対して放出する一酸化窒素の生成量で判断する自然免疫(図1)でも、左右の肉垂を用いた抗原刺激による腫脹差、すなわち、遅延型過敏反応で判断する獲得免疫(図2)でも、海苔給与により賦活化され、免疫力が増強する。
-
[成果の活用面・留意点]
-
-
海苔の収穫時期は限られており年中供給することはできない資源であることや、年度によって飼料として活用できる排出量が異なるため保管するスペースの確保が必要である。
-
色落ち海苔の成分は収穫年度で変化することがあるため、鶏卵や免疫機能に及ぼす効果については、その都度分析を実施して判断するよう留意が必要。
-
本試験で用いた海苔は入札時に1枚3円以下(海苔1枚3.3g)と見込まれる海苔が対象である。
-
[具体的データ]
-

表1 産卵成績(141〜588日齢)

表2 卵黄中成分含量
 図1 一酸化窒素生成量 |
|
 図2 遅延型過敏反応 |
-
[その他]
-
研究課題名:鶏の免疫増強及び機能性鶏卵生産のための高機能性飼料の開発
予算区分 :受託(都市エリア産学官連携促進事業)
研究期間 :2005〜2007年度
目次へ戻る