9月下旬播種で年内の出穂が早く、多収なエンバク極早生品種「九州15号」
- [要約]
- エンバク「九州15号」は、出穂性、耐倒伏性、冠さび病抵抗性が改良された品種である。既存品種よりも出穂が早く、九州の低標高地で9月下旬に播種しても年内の出穂程度が高く、多収である。
- [キーワード]
- エンバク、夏播き栽培、年内出穂、耐倒伏性、冠さび病、飼料作物育種
- [担当]
- 九州沖縄農研・周年放牧研究チーム
[代表連絡先]電話096-242-7754
[区分]九州沖縄農業・畜産草地(草地飼料作)、畜産草地
[分類]技術・参考
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[背景・ねらい]
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エンバク極早生品種を用いる夏播き栽培は年内に出穂させて収穫する作付けで、その播種適期は9月上旬とされている。しかし、エンバクの播種作業は、天候や各種作業の影響で遅れることが多く、既存品種では年内の出穂が不安定で、出穂に至らない場合があり、播種が遅れた場合でもより安定して出穂し、収量性が確保できる品種が求められている。そこで、既存品種より出穂が早く、従来の播種適期から10日程度播種が遅れても年内の出穂程度が高い多収品種を育成する。
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[成果の内容・特徴]
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「九州15号」は、耐倒伏性や冠さび病抵抗性に優れるCoker820(アメリカの品種)を種子親、夏播き栽培で最も早く出穂する「九州3号」を花粉親として行った組み合せから育成された。
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出穂は、夏播き栽培の標準播きで既存品種の中で最も早い「はえいぶき」や「スーパーハヤテ隼」より5日以上早い(表1)。9月下旬に播種した場合でも、出穂は既存品種より明らかに早く、出穂程度も高い(写真1、表2)。
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倒伏程度は「はえいぶき」や「スーパーハヤテ隼」より小さく、耐倒伏性に優れる(表1)。
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夏播き栽培(標準播き)での系統適応性検定試験における乾物収量は「はえいぶき」比99%、群馬県のくにさだ育種農場では108%である(表1)。9月下旬に播種した場合は「はえいぶき」比112%である(図1)。秋播き栽培(西南暖地で11月播種、翌春に乳熟ー糊熟期刈り)では「はえいぶき」比91%である(表1)。
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重要病害である冠さび病に対する抵抗性は「極強」であり、各種病害には既存品種と同程度の抵抗性を示す(表1)。
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推定TDN含量は「はえいぶき」よりやや低いが、粗蛋白質含有率は「はえいぶき」と同程度である(表1)。
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精選種子重は「はえいぶき」と同程度で、採種性は問題ない(表1)。
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[成果の活用面・留意点]
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本品種は関東以西の低標高地を適地とするが、既存の極早生品種を栽培できる地域では本品種も利用可能である。普及見込み面積は500ヘクタールである。
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従来の夏播き用品種より遅播きが可能であるため、イタリアンライグラスとの混播などで年内の収量を確保する栽培に適する。
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秋播き・翌春収穫の栽培では低収となるので、利用は控える。
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[具体的データ]
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表1 エンバク「九州15号」の夏播き栽培(標準播き)における生育特性と採種量

写真1 出穂程度の差(2005年9月20日播種、12月16日撮影、熊本)

図1 9月下旬播種における乾物収量(熊本)

表2 9月下旬播種における出穂まで日数と出穂程度(熊本)
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[その他]
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研究課題名:周年放牧による放牧(肥育)期間の延長と自給飼料資源を活用した肉用牛の育成・肥育システムの開発
課題ID:212-d
予算区分 :基盤
研究期間 :1994〜2006年度
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