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耐倒伏性と冠さび病抵抗性に優れるエンバク極早生品種「九州16号」


[要約]
エンバク「九州16号」は、耐倒伏性と冠さび病抵抗性が改良された品種である。既存品種よりも耐倒伏性に優れ、降雨による倒伏に強い。

[キーワード]
エンバク、夏播き栽培、耐倒伏性、冠さび病、年内出穂、飼料作物育種

[担当]
九州沖縄農研・周年放牧研究チーム

[代表連絡先]電話096-242-7754	
[区分]九州沖縄農業・畜産草地(草地飼料作)、畜産草地	
[分類]技術・参考	

[背景・ねらい]
エンバク極早生品種を用いる夏播き栽培は年内に出穂させて収穫する作付けであるが、既存品種では倒伏の発生が問題となっている。倒伏は収穫ロスの増大、品質低下に繋がり、エンバクの栽培を敬遠する一因になっている。したがって、より安定した自給飼料生産のためには、耐倒伏性をさらに高めた品種への置き換えが必要と考えられる。そこで、夏播き栽培で出穂の早晩性が既存品種と同程度で、耐倒伏性を高めた品種を育成する。

[成果の内容・特徴]
  1. 「九州16号」は、日長感応性の低いDonald(カナダの品種)を種子親、耐倒伏性や冠さび病抵抗性に優れるCoker87-9(アメリカの品種)を花粉親として行った組み合せから九州沖縄農業研究センターおよびカネコ種苗株式会社で育成された。

  2. 出穂は、夏播き栽培の標準播きで既存品種の中で最も早い「はえいぶき」や「スーパーハヤテ隼」と同程度である(表1)。

  3. 倒伏程度は「はえいぶき」や「スーパーハヤテ隼」より小さく、耐倒伏性に優れ、地域によってその傾向が顕著である(表1図1写真1写真2)。

  4. 夏播き栽培(標準播き)での乾物収量は「はえいぶき」比92%である(表1)。秋播き栽培(西南暖地で11月播種、翌春に乳熟ー糊熟期刈り)では「はえいぶき」比106%である(表1)。

  5. 重要病害である冠さび病に対する抵抗性は「極強」であり、各種病害には既存品種と同程度の抵抗性を示す(表1)。

  6. 粗蛋白質含有率はおよび推定TDN含量は「はえいぶき」よりやや高い(表1)。

  7. 精選種子重は「はえいぶき」より多く、採種性は問題ない(表1)。

[成果の活用面・留意点]
  1. 本品種は関東以西の低標高地を適地とするが、既存の極早生品種を栽培できる地域では本品種も利用可能である。普及見込み面積は500ヘクタールである。

  2. 各地域の夏播き栽培における播種適期内に播種する。

[具体的データ]

表1 エンバク「九州16号」の夏播き栽培(標準播き)における生育特性と秋播き栽培での収量性および採種量


図1 系統適応性検定試験における倒伏程度


写真1 宮崎畜試で観察された倒伏状況(2003年11月19日撮影)


写真2 カネコ種苗くにさだ育種農場で観察された倒伏状況(2006年12月7日撮影)

[その他]
研究課題名:周年放牧による放牧(肥育)期間の延長と自給飼料資源を活用した肉用牛の育成・肥育システムの開発
課題ID:212-d
予算区分 :基盤
研究期間 :1994〜2006年度


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