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焼酎粕濃縮液混合による発酵TMRの乾物回収率の向上と開封後の変敗抑制


[要約]
米あるいは麦焼酎粕濃縮液を発酵TMR原料として20%以下の乾物割合で混合すると、優れた発酵品質で乾物回収率が向上し、開封後の好気的変敗を抑制する。

[キーワード]
焼酎粕濃縮液、発酵TMR、サイレージ

[担当]
九州沖縄農研・イネ発酵TMR研究チーム

[代表連絡先]電話096-242-7756	
[区分]九州沖縄農業・畜産・草地、畜産草地	
[分類]技術・参考	

[背景・ねらい]
焼酎粕の処理工場が新設され、腐敗しやすいとされる焼酎粕も濃縮、乾燥等の段階を経ることにより、保存性が高まり、TMR原料としての利用価値が高まってきている。乾燥処理された焼酎粕はすでに飼料原料としての利用が確立しているものの、濃縮後の乾燥段階での投入エネルギーが大きく、濃縮液段階での飼料利用が求められている。そこで、焼酎粕濃縮液(濃縮液)を原料に含む流通可能な発酵TMR調製技術を開発するため、焼酎粕濃縮液の混合が発酵TMRの品質に及ぼす影響を明らかにする。

[成果の内容・特徴]
  1. 米あるいは麦焼酎粕濃縮液は栄養構成からTMRの原料として乾物比30%までは濃厚飼料と代替可能であり、濃縮液の混合により発酵前TMRのpHは低下し、緩衝能、VBNが高まる(表1)。

  2. 夏季においては濃縮液の混合割合にかかわらず、pHが良発酵の目安である4.2より低く、不良発酵を示す酪酸(C4)以上の含量が低く、乳酸含量が高いフリーク評点で優れた発酵品質の発酵TMRが調製される。冬季においてもフリーク評点で優れた発酵品質を示すが、濃縮液の混合割合が高まるとpHの上昇あるいは乳酸含量が減少する(表2)。

  3. 夏季においては濃縮液を混合した発酵TMRは、糸状菌等の発酵に由来する開封後の温度上昇がなく、好気的変敗が抑制される。冬季では濃縮液を乾物あたり30%混合した発酵TMRは、温度が上昇し好気的変敗が抑制されない(図1)。

  4. 濃縮液を乾物あたり20%混合し、400kg規模のフレコンバッグで調製した発酵TMRは、濃縮液未混合の対照区より乾物回収率が向上する(図2)。

  5. これらのことから、米あるいは麦焼酎粕濃縮液のTMRへの混合割合が乾物20%までは発酵品質が優れ、好気的変敗を抑制する発酵TMRが調製できる。

[成果の活用面・留意点]
  1. 米あるいは麦焼酎粕濃縮液を原料として発酵TMRを調製する際に活用できる。

  2. 米、麦以外の原料からなる焼酎粕濃縮液の利用では性状、組成が異なるため留意する。

  3. 飼料イネWCSをTMR原料として用いた場合も同様の結果を得ているが、原料となるサイレージの草種、発酵品質の違いが発酵TMRの発酵品質に及ぼす影響については詳細な検討が必要である。

[具体的データ]

表1 材料のpH、緩衝能およびVBN含量


表2 焼酎粕濃縮液を混合した発行TMRの発酵品質


図1 発酵TMRの開封後の温度変化


図2 発酵TMRの乾物回収率

[その他]
研究課題名:暖地における飼料イネ等の発酵TMR生産技術の開発による地域利用システムの構築
課題ID:212-b
予算区分 :基盤研究費、委託プロ(えさプロ)
研究期間 :2006-2007年度


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