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高温環境下の肥育豚は酸化ストレスが亢進している


[要約]
環境温度23℃に比べて30℃で5週間飼育した豚では、ラジカル生成の抑制に関わる血漿中セルロプラスミン活性とラジカル捕捉能を示す血漿中総抗酸化能測定値が低下し、酸化ストレスは亢進する。その結果、DNAの酸化損傷は増加の傾向を示す。

[キーワード]
暑熱環境、ブタ、酸化ストレスマーカー

[担当]
九州沖縄農研・九州バイオマス利用研究チーム、暖地温暖化研究チーム

[代表連絡先]電話096-242-7749	
[区分]九州沖縄農業・畜産草地、畜産草地	
[分類]研究・参考	

[背景・ねらい]
適温環境に比べて暑熱環境下で飼育した肥育豚では、豚肉中脂質過酸化物が増加することから、暑熱ストレスの一部は酸化ストレスであると推測される。
そこで、気温30℃の暑熱環境下で飼育した豚から血液および尿を採取して、各種酸化ストレスマーカーを測定して、暑熱ストレスの一部が酸化ストレスであるか否かを明らかにする。

[成果の内容・特徴]
  1. 環境温度23℃の適温環境と30℃の暑熱環境下で、採食量が同じになるようにして肥育豚を5週間飼育しても、血漿中還元型グルタチオン量および全血中グルタチオンペルオキシダーゼ、血球中グルタチオンレダクターゼと血球中スーパーオキシドジスムターゼの各活性には差がみられない(表1)。

  2. 適温に比べて暑熱環境下で肥育豚を5週間飼育すると、ラジカル生成を抑制する予防的抗酸化物の一つである血漿中セルロプラスミンの活性と、ラジカル捕捉型抗酸化物質の量を示す血漿中総抗酸化能測定値(TotalAntioxidantStatus)は低下する(P<0.05、表2)。

  3. その結果、脂質の酸化損傷の程度を示す血漿中チオバルビツール反応生成物やヒドロペルオキシド含量に差はみられないものの(表3)、DNAの酸化損傷の程度を示すリンパ球コメットアッセイのtaillengthは増加の傾向を示す(P=0.16、表3)。

[成果の活用面・留意点]
  1. 暑熱ストレスの一部が酸化ストレスであることを具体的に示す酸化ストレスマーカーが明らかにできたので、今後の暑熱対策の研究に活用できる。

  2. グルタチオンを介して抗酸化に関わる酵素群の活性は、慢性的な酸化ストレス状態では順応の可能性が考えられるため、経時的な観察が必要である。

[具体的データ]

表1 暑熱環境下の去勢雄豚における血漿中GSH含量、全血中GPx活性および血球中GRとSOD活性


表2 暑熱環境下の去勢雄豚における血漿中TASおよびセルロプラスミン活性


表3 暑熱環境下の去勢雄豚における血中および尿中の酸化損傷の指標

[その他]
研究課題名:暖地における畑作物加工残渣等地域バイオマスのカスケード利用・地域循環システムの開発
課題ID:411-d
予算区分 :交付金プロ(形態・生理)
研究期間 :2004〜2007年度


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