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土壌水分管理モデルへの誘導による極早生ウンシュウの高糖度化


[要約]
極早生ウンシュウのシートマルチ栽培において、体積含水率を指標とする土壌水分管理モデルを作成し、TDR土壌水分計を用いて管理モデルに誘導することで糖度11度以上の高糖度果実が生産できる。

[キーワード]
ウンシュウミカン、シートマルチ栽培、土壌水分管理、TDR土壌水分計

[担当]
福岡農総試・果樹部・果樹栽培チーム

[代表連絡先]電話092-922-4946	
[区分]九州沖縄農業・果樹	
[分類]技術・普及	

[背景・ねらい]
ウンシュウミカンのシートマルチ栽培は、土壌水分を制御することで果実品質の向上を図ることを目的としているが、生産現場では土壌水分を簡易に診断できる明確な指標がなく、かん水やシートの開閉の判断基準が不明瞭なため、乾燥不足または過乾燥による糖度不足や小玉化、酸高を招いている。
そのため、TDR土壌水分計により簡易に測定できる体積含水率を指標とする土壌水分管理モデルを作成し、モデルへの誘導によるシートマルチ栽培極早生ウンシュウの高糖度化を実証する。

[成果の内容・特徴]
  1. TDR土壌水分計によって迅速に測定できる体積含水率は、樹冠外周部の土壌表層12cmを1樹当たり2〜3点測定することで樹体の水分状態との相関が高く(データ略)、極早生ウンシュウのシートマルチ栽培における土壌水分管理モデルに用いる指標値として活用できる(図1)。

  2. 花崗岩土壌における「日南1号」のシートマルチ栽培では、土壌水分を管理モデルの範囲内に誘導することで、シート無被覆よりも糖度が2度以上高い、概ね11度以上の高糖度果実が生産できる(図2表1)。

  3. 結晶片岩土壌におけるシートマルチ栽培では、花崗岩土壌で作成した管理モデル指標値よりも土壌水分を5〜6%高く補正した管理モデルへと誘導することで、シート無被覆よりも糖度が1度以上高い、11度以上の果実が生産できる(図3表1)。

[成果の活用面・留意点]
  1. 図1に示す土壌水分管理モデルは、極早生ウンシュウのブランド果実生産拡大のための花崗岩土壌におけるシートマルチ栽培の指標として活用できる。

  2. 母岩が異なる土壌では、体積含水率が同じでもpF値が異なるため、花崗岩以外の母岩ではpF-水分曲線を作成し、花崗岩土壌との対比により管理モデルの補正を行う。

  3. 母岩が同じでも土壌の物理性が異なるとpF-水分曲線は変動するため、果実の日肥大量や糖度、クエン酸含量を確認し、目標値と異なる場合は最適土壌水分値を調整する。

  4. 6月からの早期シート被覆においては、被覆期間が長期化するため、土壌水分20%以上で被覆を開始し、夏季の過乾燥を回避するため点滴かん水施設を整備する。

  5. TDR土壌水分計の測定値が適正範囲を下回る場合は、週に1〜2回、10〜20mmのかん水を行う。

[具体的データ]

図1 花崗岩土壌におけるシートマルチ栽培極早生ウンシュウの土壌水分管理モデルと生育目標

図2 花崗岩土壌における「日南1号」のシートマルチ栽培期間中の土壌水分(2005〜2006年)
 
図3 結晶片岩土壌における「上野早生」のシートマルチ栽培期間中の土壌水分(2006年)


表1 土壌水分管理モデルに誘導したシートマルチ栽培極早生ウンシュウの果実品質(2005〜2006年)

[その他]
研究課題名:水分ストレスの簡易現場診断による九州産極早生温州の高糖度化技術の開発
予算区分 :国庫(高度化事業)
研究期間 :2004〜2006年度


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