12月上旬出荷用のウンシュウミカン新品種「肥のみらい」
- [要約]
- 「肥のみらい」は、普通ウンシュウ「白川」の変異系統を種子親に「はるみ」を花粉親として育成した珠心胚実生である。「白川」に比べ樹勢がやや弱く、結果性が良いため、収量は多く、果実の中玉果率は高い。また、11月中旬には完全着色し、食味が優れ、栽培しやすい中生の普通ウンシュウとして期待できる。
- [キーワード]
- 普通ウンシュウ、新品種、肥のみらい、珠心胚実生、12月上旬出荷
- [担当]
- 熊本農研セ・果樹研・常緑果樹研究室
[代表連絡先]電話0964-32-1723
[区分]九州沖縄農業・果樹
[分類]技術・参考
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[背景・ねらい]
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贈答用や家庭用にウンシュウミカンが最も消費される時期である12月上旬に出荷可能で食味が優れ、栽培しやすい品種を育成する。
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[成果の内容・特徴]
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1994年、「白川」変異系統(「白川」より成熟が1ヶ月程度早く、樹勢がやや弱い)を種子親に「はるみ」を交配し、胚分離・培養を行って育成した珠心胚実生である。2007年8月7日に品種登録された。
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「白川」と比較して、樹勢がやや弱く、「興津早生」より強い。また枝梢は、「白川」に比べ春梢の基部径が細く、長さは短く、徒長枝の発生は少ない(表1)。
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「白川」と比べ結果性が良好で(図2)、果実は扁平であり、大きさはM・L級の中玉果比率が高い(図3)。
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果実着色は「興津早生」に比べやや遅いが、「白川」より早く、11月中旬には完全着色し、果皮色は濃い傾向にある。また、この時期より浮皮が発生する(表2)。
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果汁成分は、「白川」、「興津早生」に比べ糖度がやや高く、クエン酸はやや低い。じょうのうは「白川」に比べ、軟らかいため食べやすく、食味は良好である(表2)。
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[成果の活用面・留意点]
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「肥のみらい」は、県内ウンシュウミカン栽培地域において、温暖で日照条件が良く排水良好な園に適する。
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結果期に至るまで、葉数を確保し、適正な樹勢を維持することが必要である。また、結果期以降はシートマルチ栽培を行うことにより、さらに高品質果実が生産される。
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完全着色期より浮皮が発生することから、11月中旬には収穫し、予措貯蔵後12月上旬に出荷する。
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ウイルス・ウイロイド対策として、高接ぎ樹からの穂木採取は行わない。
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[具体的データ]
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表1 「肥のみらい」の樹体、葉、枝梢の形態(2004年) |
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 図1 「肥のみらい」の着果状況 |

図2 各品種の結果率(2005〜2007年平均) |
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 図3 「肥のみらい」の階級比率(2005〜2007年平均) |

表2 「肥のみらい」の果実形態および果汁成分(2000〜2002年)
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[その他]
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研究課題名:カンキツ優良品種の開発
予算区分 :県単
研究期間 :1994〜2007年度(1971〜2007年度)
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