温暖な天草地域における早生ウンシュウ「興津早生」の高品質果実生産
- [要約]
- 温暖な天草地域の早生ウンシュウ「興津早生」に、シートマルチ栽培とエチクロゼート散布を組み合わせることにより果皮色は濃く、果実品質は良好となる。また、樹冠表層の果実を粗摘果時に除去することにより、日焼け果の発生が少ない。
- [キーワード]
- 天草地域、興津早生、高品質果実生産、シートマルチ、エチクロゼート、樹冠表層摘果
- [担当]
- 熊本農研セ果樹研・常緑果樹研究室
[代表連絡先]電話0964-32-1723
[区分]九州沖縄農業・果樹
[分類]技術・参考
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[背景・ねらい]
- 気候温暖化に伴い、カンキツでは生育が早まり熟期の促進が図られるが、反面、秋期の高温や多雨により、ウンシュウミカンにおいては日焼け果の発生や成熟期以降の新梢・新根の発生、着色遅延、浮皮の発生等品質の低下が懸念されている。
- そこで、県南の温暖な天草地域において高品質果実生産を図るため、シートマルチ栽培とエチクロゼート散布を組み合わせた栽培並びに摘果方法の改善による品質低下防止技術を実証する。
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[成果の内容・特徴]
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温暖な天草地域において、シートマルチとエチクロゼート散布を組み合わせることにより、着色歩合は高く、果皮色の濃い果実となり、果実の糖度も向上する(表2)。
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1樹当たり収量は、対照区とほぼ同等かやや少ない程度である(表3)。果実の階級は、L級果以上の大玉果率がやや低く、S級果の比率が高くなる(データ略)。
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浮皮は発生しなかったが、日焼け果は樹冠表層の果実を摘果すると少ない(図1)。
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温暖な地域では糖酸ともにやや低く、果皮色は淡い果実になりやすいが、シートマルチ栽培とエチクロゼート散布を組み合わせることにより、高品質果実が生産できる。また、粗摘果時に樹冠表層部の果実を摘果することにより日焼け果の発生を軽減できる。
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[成果の活用面・留意点]
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シートマルチ期間中に、旧葉等の落葉がみられるなど、樹体の水分ストレスが過度にかかるような場合にはかん水を行う必要がある。
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エチクロゼートの散布は、7月中旬から8月下旬頃までに1〜2回散布を行うが、樹勢低下が懸念される場合は散布を控えるなどの対応が必要である。
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樹冠表層の摘果は7月上中旬にかけて行うが、慣行摘果に比べるとやや小玉になりやすいため、気象条件や果実の肥大状況等を考慮しながら、8月下旬以降小玉果を中心に仕上げ摘果を実施する必要がある。
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[具体的データ]
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表1 実証園における「興津早生」の管理方法

表2 実証園における「興津早生」の果実品質と果皮色
 表3 実証園における「興津早生」の1樹当たり収量 |
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 図1 実証園における「興津早生」の日焼け果数(2007) |
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[その他]
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研究課題名:気候温暖化に対応したカンキツの安定生産技術の開発
予算区分 :気候温暖化
研究期間 :2003〜2007年度
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