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気候温暖化によるウンシュウミカンの品質低下の品種間差


[要約]
近年の気温上昇により、ウンシュウミカンでは開花期が早まって、収穫期にはクエン酸含量が少なくなる。早生、普通ウンシュウは甘味比が上昇するのに対して、極早生ウンシュウは秋季の高温により糖度が低くなる傾向があり、着色は遅れ、果実品質が低下しやすい。

[キーワード]
気温上昇、ウンシュウミカン、開花期、糖度、クエン酸含量、甘味比

[担当]
福岡農総試・果樹部・果樹栽培チーム
[代表連絡先]電話092-922-4946     
[区分]九州沖縄農業・果樹   
[分類]研究・普及       

[背景・ねらい]
気候温暖化が農業に及ぼす影響に関しては多くの予想がなされているが、永年性の果樹栽培においては作期の調整や品種更新が容易に行えず、特に問題が大きい。ウンシュウミカンにおいても近年、着色遅延や糖度低下など種々の問題が発生している。このような果実品質の低下と温暖化との関係についてはいくつかの報告がなされているが、温暖化による生育の変化については地域による違いがみられる。
そこで、極早生(`山川早生'、`日南1号')、早生(`興津早生')、普通(`青島温州')のウンシュウミカンについて、場内果樹ほ場で20年間(1986〜2005年)調査したデータを基に、近年の気温上昇が福岡県のウンシュウミカンの果実品質に及ぼす影響を明らかにする。

[成果の内容・特徴]
  1. 福岡(太宰府アメダス)における平均気温は、1986-1995年に比べて1996-2005年の方が年間で0.7℃高く、特に春期および秋期の平均気温が1℃程度高い(表1)。

  2. 極早生、早生、普通ウンシュウとも1986-1995年と1996-2005年の平均発芽日に差はないが、平均満開日は、いずれの品種も1996-2005年の方が5日早い(表2)。

  3. 極早生、早生、普通ウンシュウとも1986-1995年に比べて1996-2005年の方がクエン酸含量が顕著に少ない。早生、普通ウンシュウは甘味比も上昇するのに対して、極早生は糖度が1度以上低くなって着色も遅れ、気候温暖化により果実品質が低下する(表2)。

  4. 極早生ウンシュウ`山川早生'では、秋季の気温が高い年は糖度が低下する傾向がみられる(図1)。秋季の高温により糖度が低下・停滞した場合、成熟期間の短い極早生ウンシュウは、収穫期の遅い品種に比べて糖度が低くなりやすい(図2、一部データ略)。

[成果の活用面・留意点]
  1. 産地において品種を導入する際の参考資料とする。

  2. 極早生ウンシュウは、6〜7月からの早期シートマルチ処理等により、夏秋季の早い時期から果実の糖度向上を図る。

[具体的データ]

表1 福岡における近年20年の月平均気温の変化(1986-2005)


表2 近年20年のウンシュウミカンの生育と収穫期の果実品質(1986-2005)

図1 `山川早生'の収穫期の糖度と秋季の平均気温の関係(1986-2005)
 

図2 秋季気温の違いによる糖度の推移の品種間差(1986-2005)

[その他]
研究課題名:カンキツ品種・系統適応性
予算区分 :経常
研究期間 :1980〜2007年度


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