グラニエ法によるウンシュウミカンの樹液流速度を利用した水分ストレス診断法
- [要約]
- ウンシュウミカンにおいて、グラニエ法によって測定した樹液流速度の相対値は、葉の最大水ポテンシャルと相関があり、樹体の水分ストレス診断に利用することができる。
- [キーワード]
- ウンシュウミカン、水分ストレス、樹液流速度、グラニエ法
- [担当]
- 福岡農総試・果樹部・果樹栽培チーム
[代表連絡先]電話092-922-4946
[区分]九州沖縄農業・果樹
[分類]研究・参考
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[背景・ねらい]
- ウンシュウミカンの樹体の水分ストレス診断は、プレッシャーチャンバー法などによる葉の最大水ポテンシャル(ψmax)の測定が有効であるが、深夜の測定が必要なため、これに替わる簡便な水分ストレス診断法の開発が望まれている。
- そこで、林学分野で樹木の樹液流速度の測定に利用されているグラニエ法が、ウンシュウミカン樹体の水分ストレス診断に利用可能かを検討する。
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[成果の内容・特徴]
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ウンシュウミカンの樹液流速度は、グラニエ法によって連続的に測定でき、日射量と強い関係があるとともに、水分ストレスが強い(LWPψmaxが低い)ほど抑制される(図2、一部データ略)。
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新葉緑化後(6月下旬)の樹液流速度に対する相対値が0.4以下の日は、LWPψmaxが品質向上の目安とされる-1.0MPaより低い-1.2MPa以下であり、ウンシュウミカンの樹体が潅水を必要とする強度の水分ストレス状態にあることを検知できる(図3)。
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[成果の活用面・留意点]
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樹液流速度を測定することで、水分ストレス診断による潅水管理や樹体生理の解明に応用できる。
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樹液流速度を利用した水分ストレスの診断は、日射量の安定した晴天日の12〜14時の測定値を用いる。また、樹には個体差があるため、樹液流速度の相対値を樹ごとに求める必要がある。
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グラニエ法は、センサーから発する熱量が樹液流によって変化することを利用して測定する方法である。樹体内に長さ20mmのセンサーを挿入するため、幹径が4cm以上必要である。また、測定時に測定部への日射による温度変化や結露、雨滴等による測定誤差を防ぐため、センサー部にカバーを取り付ける必要がある。
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[具体的データ]

図1 グラニエセンサーの概要

図2 日射量と水分ストレスの違いがウンシュウミカンの樹液流速度の日変化に及ぼす影響

図3 樹液流速度の相対値とLWPの相関
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[その他]
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研究課題名:水分ストレスの簡易現場診断による九州産極早生温州の高糖度化技術の開発予算区分:国庫(高度化事業)
研究期間 :平成18年(平成16年〜平成18年度)
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