促成イチゴ栽培で早期収量の増加と収穫の平準化が可能なクラウン温度制御技術
- [要約]
- 開発したクラウン温度制御装置は、低コストでイチゴのクラウン部温度を精度良く制御できる。本装置を用いて、イチゴの促成栽培においてクラウン部を20℃前後で管理すると、第1次腋果房の早進化により2月までの早期収量が増加し、収穫が平準化する。
- [キーワード]
- イチゴ、クラウン部温度、早期収量、早進化、第1次腋果房、平準化
- [担当]
- 九州沖縄農研・イチゴ周年生産研究チーム
[代表連絡先]電話0942-43-8362
[区分]九州沖縄農業・野菜花き、野菜茶業・野菜栽培生理
[分類]技術・普及
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[背景・ねらい]
- 近年の気候温暖化傾向により、イチゴの中心作型である促成栽培では、秋春期の高温等による花芽分化の遅延と果実品質の低下が生じている。また、短日夜冷や暗黒低温等の花芽分化処理を行い高単価の年内の収量を確保する早出し栽培での頂果房と第1次腋果房間の収穫休止期間の拡大(中休み)等が問題となっている。
- 従来の短日夜冷等の低温処理は、育苗段階に限られるため、頂果房しか制御できなかった。そこで、本圃を含めて年間を通じて、イチゴの花芽分化や休眠など、生産上重要な生理現象の場となるクラウン部を花芽の分化から発達に最適な温度に制御できるクラウン温度制御装置を開発するとともに、高温期における花芽分化の安定制御、低温期における腋果房の連続的な出蕾制御に有効なクラウン温度制御技術を開発する。
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[成果の内容・特徴]
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クラウン温度制御装置は冷温水製造装置と2連チューブからなる(図1)。
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2連チューブは材質が軟質塩ビで柔軟性をもち、クラウン部密着性・敷設作業が容易である。また、一体往復管構造で熱損失を低減でき、高温期には冷水、低温期には温水を往復通水することで精度良く温度制御が可能である(図1、図2)。
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短日夜冷等の花芽分化処理育苗を行う早出し促成栽培において、9月上旬の定植直後からクラウン部温度を20℃前後で管理すると、第1次腋果房の分化・生育の早進化によって収穫の中休みがなくなり、2月末日までの早期収量が倍増する。さらに、10月下旬以降の低温期には葉や果房の展開速度は速まり、収穫が平準化する(図2、図3、表1)。
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高温期の定植後からクラウン部を冷却すると、果実の痩果数が増え、果実肥大が優れる(表1)。
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[成果の活用面・留意点]
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- クラウン温度制御装置はインバーターヒートポンプ方式の冷却・加温兼用タイプで、冷却能力は7.0kW、加熱能力は6.7kW、10a当たりの初期導入コストは約2,500千円(減価償却は6年)、促成栽培でのランニングコストは約34千円/月である。
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クラウン温度制御装置のコストの概算値は年間で約800千円と見積もられ、イチゴの収穫増による利益を十分下回り、農家の所得向上に寄与できる。
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冷却媒体として、15℃前後の地下水や河川水等を利用することにより、クラウン温度制御装置の低コスト化が可能である。
- クラウン部温度制御装置は(有)ナチュラルステップから販売されている。
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[具体的データ]
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図1 クラウン温度制御装置
図2 現地実証圃場の日平均温度
図3 促成栽培における収量の推移
表1 促成栽培における生育(現地実証試験)
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[その他]
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研究課題名:西南暖地におけるイチゴの周年高品質生産技術の開発
課題ID:213-b.2
予算区分 :高度化事業(イチゴクラウン温度制御)
研究期間 :2005〜2007年度
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