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イチゴ「あまおう」に適したパルプモウルドポットの形状と利用技術


[要約]
イチゴ「あまおう」に適した形状のパルプモウルドポットは容量330mlで、底穴と2mm幅のスリットを4つ有する。この容器では、ポリポットと同等の施肥量と3割程度多いかん水量で育苗すると、培地温度が低下し花芽分化が早くなり、同等の商品果収量が得られる。

[キーワード]
イチゴ、パルプモウルドポット、あまおう、施肥量、かん水量

[担当]
福岡農総試・野菜栽培部・イチゴ栽培チーム、(大石産業株式会社)

[代表連絡先]電話092-922-4364	
[区分]九州沖縄農業・野菜花き	
[分類]技術・参考	

[背景・ねらい]
福岡県のイチゴ生産は、高齢化やリタイヤによって生産力が低下しており、高齢者に対する労働負担の軽減や農業後継者の規模拡大の手段として省力化技術の確立が急務となっている。また、農業生産に対する環境保全の意識が高まる中で、イチゴ生産においては育苗に使用するポリポットの廃プラスチック処理が問題となっている。
そこで、労力軽減と廃プラスチック排出量削減を図るため、ポットごと定植できるパルプモウルドポットについて、イチゴ「あまおう」に適した形状と利用技術を開発する。

[成果の内容・特徴]
  1. イチゴ「あまおう」に適したパルプモウルドポットは、縦9cm×横9cm×深さ7cm、容量330mlで、定植後の発根が優れる底面中央の底穴とポット底面から側面にかけて2mm幅のスリットを4つ有する形状とした(図1-a、一部データ略)。

  2. パルプモウルドポット内の培地温度はポリポットと比較して、最高で約4℃、1日平均で約1℃低下する(図1-b)。

  3. パルプモウルドポット苗では、施肥量を慣行と同等か1.5倍にすると慣行苗の生育量と同等となる。パルプモウルドポット苗の花芽分化は、施肥量が異なってもポリポットより早くなる。経費の面から、施肥量はポリポットと同量が適する。(表1、一部データ略)。

  4. 育苗期に必要なかん水量は、パルプモウルドポットがポリポットより約3割程度多い(図2)。

  5. パルプモウルドポットを使用した場合の労働時間は、ポリポットと比較してポットのトレイ詰めおよび定植作業が短くなり、育苗から定植にかけて約2割削減できる(データ略)。

  6. 定植後の発根量は、パルプモウルドポットがポリポットよりやや少ない。パルプモウルドポットを使用した苗の商品果収量、果数、1果重および商品果率は、ポリポットと同等である(表2、一部データ略)。

[成果の活用面・留意点]
  1. イチゴ育苗用の容器として活用できる。

  2. 育苗容器をポリポットからパルプモウルドポットに変更することで、農業用廃プラスチックの排出量が削減できる。

  3. ポットが積み重ねられた状態で収納するため、短期の収納場所の確保が必要である。

  4. パルプモウルドポットでは、強風による転倒防止の目的に加え、育苗後期に強度が低下し、ポットの縁が崩壊しやすいためポットを入れるトレイを使用する必要がある。

  5. パルプモウルドポットの崩壊は1ヶ月程度で始まり、強度は雨よけ状態と比較して露地状態が早く低下する。

  6. 開発したパルプモウルドポットは大石産業株式会社から発売予定である。

[具体的データ]

図1 開発したパルプモウルドポットの形状とポット内培地温度


表1 容器の種類による花芽分化指数(平成18年)


図2 容器の種類による必要かん水量(平成18年)


表2 容器の種類による商品果収量、果数、1果重および商品果率

[その他]
研究課題名:環境に優しい新農業資材の開発とその利用技術
予算区分 :受託(福岡県産炭地域振興センター)
研究期間 :2004〜2006年度


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