イチゴの連続うね利用栽培におけるδ15N値を用いた土壌窒素依存率の推定
- [要約]
- 基肥量の少ないイチゴの連続うね利用栽培では、果実の全窒素δ15N値は土壌の全窒素δ15N値を反映している。土壌窒素依存率は72〜85%と推定され、慣行の53%に比べて高い。6作連続うね利用しても収量は低下しないが、有機物を施用しないと土壌窒素が消耗する。
- [キーワード]
- イチゴ、δ15N値、連続うね利用栽培、窒素
- [担当]
- 佐賀県上場営農センター・畑作経営研究担当
[代表連絡先]電話0955-82-1930
[区分]九州沖縄農業・野菜花き
[分類]研究・参考
-
[背景・ねらい]
- 佐賀県上場地域のイチゴ栽培では、面積35haのうち連続うね利用栽培の導入が7割を超え、総施肥量が窒素成分で10kg/10a未満と少ないのが特徴である。そこで、土壌や肥料のδ15N値(窒素安定同位体比)を反映するとされる果実のδ15N値を測定し、2ソースモデルを用いて連続うね利用栽培における土壌窒素への依存率を推定する。
-
[成果の内容・特徴]
-
- 基肥量の少ない連続うね利用栽培のイチゴ果実の全窒素δ15N値は+6.6〜+9.6‰であり、土壌の全窒素δ15N値+7.8〜+10.6‰と近似している。有機物(δ15N値-0.3‰、腐葉土、仮比重0.15、全窒素1.82%)と肥料(δ15N値+4.0‰、動物質有機100%、窒素保証成分5%)の施用量が多いと、土壌及び果実のδ15N値も低下しており、投入資材の影響を受けている(図1)。
- δ15N値を用い2ソースモデルで計算した土壌窒素依存率は、基肥窒素2kg/10aの連続うね利用栽培の有機物無施用で72%、有機物施用で85%と推定され、慣行の53%に比べ高い(表1)。
-
収量は無肥料で6年連続うね利用しても慣行と同等であるが、全窒素や可給態窒素などの土壌窒素が減少する(表1)。
-
[成果の活用面・留意点]
-
- δ15N値(窒素安定同位体比)は、計算式{(15N/14N試料)/(15N/14N標準試料)-1}×1000(‰)で表され、耕地生態系における窒素起源の指標となる。
- 本試験は、前作終了後のうね中央表面に有機質肥料を施用し、深さ約10cmを耕起している。また有機物を施用した区では、施肥と同時に7m3/10aの腐葉土を3作目から連用している。土壌窒素を維持するためには、土壌診断を行いながら適当な有機物を投入する。
-
基肥量は表1に示したとおりで、6年間同じである。また、追肥量は窒素成分で0(6作・5作)、1.3(4作)、1.5(3作)、5(2作)kg/10aである。
-
[具体的データ]
-

図1 土壌のδ15N値と果実のδ15N値の関係

表1 イチゴにおける6年連続うね利用栽培時の収量と果実の土壌窒素依存率および土壌化学性
-
[その他]
-
研究課題名:畑作イチゴの省力・軽作業化生産技術の確立
予算区分 :県単
研究機関:2004〜2007年度
目次へ戻る