トルコギキョウの茎と根にみられる湿生植物的な空隙組織
- [要約]
- トルコギキョウは茎と根の皮層部に連続した空隙を形成する。この空隙は、根への嫌気刺激がない状態においても細胞の崩壊によって幼苗期から形成され、基部から先端に向かって発達する。この組織は湿生植物の破生通気組織に類似する。
- [キーワード]
- 耐湿性、湛水、通気組織、トルコギキョウ、空隙
- [担当]
- 九州沖縄農研・暖地施設野菜花き研究チーム、イチゴ周年生産研究チーム
[代表連絡先]電話0942-43-8380
[区分]九州沖縄農業・野菜花き(花き)、花き
[分類]研究・参考
-
[背景・ねらい]
-
トルコギキョウは、生育初期には湿潤な土壌水分条件を好み、開花期まで常時湛水で栽培しても湿害を生じないほどの高い耐湿性を示す。このような耐湿性は、畑状態の水分条件で栽培される花きとしてはきわめてまれであり、植物体に耐湿性をもたらす特別な仕組みが存在することが推測される。そこで、耐湿性に関係する茎や根の構造上の特徴を明らかにする。
-
[成果の内容・特徴]
-
-
トルコギキョウの茎と根の皮層の組織内には多数の大小の空隙が形成される(図1)。
-
この空隙は播種後40日目ごろまでに種子根の基部に形成され始め、その後、植物の生長とともに拡大しながら、主茎、種子根、太い分岐根において基部から先端に向かって発達する(図1、表1)。
-
空隙は、皮層細胞の崩壊によって生じたものであり、その構造は湿生植物にみられる破生通気組織に類似する。
-
茎伸長した植物にもロゼット化した植物にも皮層内の空隙は観察されるが、その発達は、ロゼット化した植物より、茎伸長した植物のほうで若干早い(表1)。
-
空隙は、根への湛水による嫌気刺激がない状態でも形成される(表1)。
-
[成果の活用面・留意点]
-
-
破生空隙を発達させるために湛水による嫌気刺激が必要な中生植物や乾生植物とは異なり、トルコギキョウにおける空隙の形成は、環境条件に依存しない特性であることから、トルコギキョウは内部構造的にはイネなどの湿生植物に近いと判断される。
-
トルコギキョウの高い耐湿性を理解し、栽培の安定化に資するための情報として利用できる。
-
[具体的データ]
-

表1 茎と根の皮層組織における破生空隙の形成

図1 茎と根の皮層組織に形成された破生空隙(矢印)
-
[その他]
-
研究課題名:暖地における簡易施設等を活用した野菜花きの高収益安定生産技術の開発
課題ID:213-d
予算区分 :基盤
研究期間 :2006〜2007年度
目次へ戻る