Navigation>>九州沖縄農業研究センター >> 研究成果情報 >> 平成19年度目次

茶園の周縁部を対象としたクワシロカイガラムシの効率的防除


[要約]
クワシロカイガラムシの第1世代幼虫に対する茶園周縁部防除は、茶園全体のクワシロカイガラムシの密度を低く抑えることが可能で、10aの茶園の場合、薬剤散布量を60%程度削減できる。

[キーワード]
チャ、クワシロカイガラムシ、周縁部防除、減農薬

[担当]
宮崎総農試・茶業支場・栽培加工科

[代表連絡先]電話0983-27-0355	
[区分]九州沖縄農業・茶業	
[分類]技術・普及	

[背景・ねらい]
現在、クワシロカイガラムシ(以下、クワシロ)の防除は、第1世代幼虫孵化期(5月上旬)に行っているが、この時期は一番茶の摘採や施肥などの茶園管理作業と重なるため、クワシロが発生している全ての茶園に対して、10a当たり1,000Lの薬剤を散布するのは難しい状況である。クワシロ卵は、相対湿度が92%以上になると孵化率が低下するため、茶園におけるクワシロの発生は、樹冠内の相対湿度が低くなりやすい周縁部で多い傾向がみられることから(平成16年度研究成果情報)、クワシロの第1世代幼虫を対象に、発生が多い周縁部のみ防除を行う周縁部防除の実用性について検討する。

[成果の内容・特徴]
  1. 茶園の内側部(4、8うね)は、最も端のうね(1うね)よりも樹冠内の相対湿度が高く、クワシロの孵化には不適となりやすい(表1)。

  2. クワシロに対して無防除条件(以下、無防除条件)では、クワシロは世代を経るごとに茶園の端の方から内側部へと広がるが、周縁部を防除することで、茶園内側部でのクワシロの増加をある程度抑えることができる(図1)。

  3. 生葉収量は、無防除条件では各うねとも雄繭の発生程度が増加するのに伴い減少するが、周縁部防除では、各茶期ともに全面防除と同程度に維持できる(図2)。

  4. 面積が10aの茶園の場合、周縁部防除での薬剤散布量は400L程度であり、全面防除の1,000Lに比べて60%程度削減できる。

[成果の活用面・留意点]
  1. 茶園管理作業で時間的余裕がない第1世代では周縁防除を行い、比較的余裕がありクワシロの密度が増加することが多い第3世代では、発生状況をみながら全面防除を行う。

  2. 試験はうね幅1.7m、18うねの茶園で実施し、茶園の両端の2うねと各うねの出入り口の3m程度を周縁部、それ以外の部分を内側部と定義する。

  3. クワシロカイガラムシの第1世代幼虫に対して、ブプロフェジンフロアブル(1000倍)を10aあたり1000リットルの割合で散布した結果である。

  4. うね間が広く空いている茶園や幼木園等の風通しが良く、樹冠内の相対湿度が低い茶園では効果は低い。

[具体的データ]

表1 各世代のふ化時期における樹冠内の湿度(平成17年)


図1 雄繭発生量の推移


図2 各茶期の10aあたり生葉収量の比較(平成17年)

[その他]
研究課題名:茶害虫クワシロカイガラムシの環境保全型防除技術の実用化
予算区分 :県単
研究期間 :2004〜2006年度


目次へ戻る