アスパラガス半促成長期どり栽培におけるアザミウマ類の総合防除体系
- [要約]
- アスパラガス半促成長期どり栽培において、近紫外線除去フィルム被覆とアザミウマ類の要防除密度に基づく薬剤散布を柱にした総合防除体系は、慣行の防除体系に比べて本種による若茎の被害を抑制し、化学薬剤の使用回数を2/3以下に低減できる。
- [キーワード]
- アスパラガス、半促成長期どり栽培、アザミウマ類、総合防除、近紫外線除去フィルム、要防除密度
- [担当]
- 長崎総農林試・環境部・病害虫科
[代表連絡先]電話0957-26-3330
[区分]九州沖縄農業・病害虫
[分類]技術・普及
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[背景・ねらい]
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アスパラガス半促成長期どり栽培における重要害虫、アザミウマ類の防除手段の中心は、化学薬剤であるが、登録農薬数が少なく防除に苦慮している。しかし、その一方で環境保全型農業や減農薬栽培技術の要望が高まってきており、化学農薬に頼らない防除体系の確立が望まれている。これまでに近紫外線除去フィルム(以下「UVC」)被覆の密度抑制効果と資材特性を明らかにしてきた(小川ら、2007)。また、アザミウマ類の要防除密度は松本ら(1997)により設定されているが、西南暖地における本密度の有効性が検討された事例はない。そこで、要防除密度に基づいた薬剤散布とUVC被覆を柱にした、アザミウマ類の総合防除体系について実用性を明らかにする。
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[成果の内容・特徴]
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総合防除体系(表1)は、UVC被覆によるアザミウマの密度抑制効果と、要防除密度による防除時期の決定を主軸として、化学薬剤の散布回数削減を主目的に構成したものである。
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要防除密度に基づく薬剤散布は、薬剤の効果を過不足なく活用し、薬剤散布回数を削減することができる。また、UVC被覆は慣行フィルムに比べてアザミウマ類の密度回復を遅延する効果がある。
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薬剤散布回数は慣行防除体系の7回に対し、総合防除体系では4回となり、化学薬剤の使用回数を2/3以下に低減できる(図1)。
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総合防除体系の利用は、慣行の防除体系に比べてアザミウマ類による若茎の被害を抑制できる(表2)。
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[成果の活用面・留意点]
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本情報における発生種は、主にネギアザミウマであり、要防除密度は、胸の高さ付近の成茎を手のひらで5回程度払い、白色板(10.5cm×22.5cm)の上に落下したアザミウマ成虫の数が平均1頭以下(任意の10ヶ所以上)である。
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UVCの種類により除去する波長域に違いがあり、アザミウマ類に対しては除去する波長域が広いフィルム(390nm程度)を使用する。
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総合区の周囲には光反射マルチを設置したが、本資材による薬剤散布回数低減効果は低い(小川ら、2007)。
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[具体的データ]
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表1 アスパラガス半促成長期どり栽培におけるアザミウマ類総合防除体系モデル

表2 総合防除体系におけるアスパラガス若茎のアザミウマ被害抑制効果

図1 総合防除体系におけるアスパラガス成茎でのアザミウマ類成虫の密度推移
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[その他]
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研究課題名:アスパラガス重要病害虫の効率的防除体系の確立
予算区分 :県単
研究期間 :2003〜2008年度
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