二条大麦の赤かび病防除適期は穂揃い10日後頃の葯殻抽出期である
- [要約]
- 国内の二条大麦は閉花受粉性で、開花期(ほぼ穂揃い期)に葯が抽出しないが、開花10日後頃に葯殻が穎花の先端から押し出されてくる。この時期が赤かび病およびかび毒蓄積に対し急激に感受性が高まる時期であり、二条大麦の赤かび病防除適期である。
- [キーワード]
- 赤かび病、かび毒、大麦、閉花受粉性、防除適期、デオキシニバレノール、ニバレノール
- [担当]
- 九州沖縄農研・赤かび病研究チーム
[代表連絡先]電話096-242-7728
[区分]九州沖縄農業・病害虫・水田作、共通基盤・生産環境・病害虫
[分類]技術・普及
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[背景・ねらい]
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赤かび病の防除においては、デオキシニバレノール(DON)やニバレノール(NIV)等のかび毒(マイコトキシン)汚染を低減させるための効果的な防除が求められており、このためには適期に薬剤散布を行うことが重要である。従来、大麦の赤かび病防除では、穂揃い期(ほぼ開花期に相当)に薬剤散布が行われてきたものの、これは十分な根拠に基づくものではなかった。そこで、赤かび病の発病およびかび毒蓄積に最も感受性が高くなる大麦の生育ステージを明らかにし、それに基づいて、赤かび病防除適期を明らかにする。
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[成果の内容・特徴]
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閉花受粉性の二条大麦においては、赤かび病の発病およびかび毒蓄積に対し最も効果の高い薬剤散布時期は、従来言われていた穂揃い期(開花期)ではなく、その10日後頃の、葯殻が抽出し始める時期である(表1)。
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国内の大麦品種は、六条大麦のほとんどが開花期に葯が抽出する「開花受粉性」であるのに対し、二条大麦ではすべて開花期に葯が抽出しない「閉花受粉性」である。開花受粉性の六条大麦は、開花期に赤かび病およびかび毒蓄積に対し最も感受性が高くなる。これに対し、閉花受粉性の二条大麦は、開花期には強い抵抗性を示すが、開花10日後頃に葯殻が穎花の先端から押し出される形で抽出し(図1)、この時期に感受性が急激に高まる(図1、Yoshida et al.2007)。このことが防除適期の決定に最も影響している。
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[成果の活用面・留意点]
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大麦の赤かび病防除基準を二条大麦と六条大麦とで分け、二条大麦の薬剤散布時期は、従来の穂揃い期から穂揃い10日後頃に変更するのが適当である。
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北部九州から北関東では、播種時期が同じであれば二条大麦の穂揃い10日後がコムギの薬剤散布適期である開花期とほぼ一致する。両者が隣接する圃場では同時に薬剤散布することによって、両者の赤かび病低減とともに、大幅な作業効率の向上が期待できる。
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トップジンMの大麦における使用基準(2008年1月現在)では、散布回数は出穂期以降1回以内に、使用時期は、水和剤とゾル剤では収穫30日前まで、粉剤では収穫14日前までに制限されている。
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[具体的データ]
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表1 二条大麦(閉花受粉性)においてチオファネートメチル剤(トップジンM水和剤)の散布時期が赤かび病の発病およびかび毒蓄積に及ぼす影響(九州沖縄農研所内圃場)

図1 二条大麦(閉花受粉性)における葯殻抽出と葯殻抽出時接種による発病の様子
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[その他]
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研究課題名:かび毒汚染低減のための麦類赤かび病防除技術及び高度抵抗性系統の開発
課題ID:323-a
予算区分 :食品総合、安信プロ
研究期間 :2003〜2007年度
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