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ビワ台木用実生苗の地下部に発生したビワがんしゅ病


[要約]
ビワ苗木生産園の台木用ビワ実生苗の地下部にがんしゅ症状が認められた。症状から分離した細菌の性状を調べたところ、ビワがんしゅ病細菌(Pseudomonas syringae pv.eriobotryae)と同定されることから、本病がビワ樹の地上部のみならず地下部でも発生することが明らかになった。

[キーワード]
ビワ、地下部、ビワがんしゅ病、Pseudomonas syringae pv.eriobotryae

[担当]
長崎果樹試・病害虫科

[代表連絡先]電話0957-55-8740	
[区分]九州沖縄農業・病害虫	
[分類]研究・普及	

[背景・ねらい]
ビワ台木用実生の地下部(根頭部)にがんしゅ状の組織が形成され、2年生苗で21.6%(根角ら,2005)と高頻度で発症し、実生苗の生育が劣ることから苗木の歩留まりが低下する被害が発生している。既報(病虫雑,21(2):150,1934)によるとビワ樹の地下部にはAgrobacterium tumefaciensによるビワ根頭がんしゅ病が発生するとされているが、この報告以外に近年の発生報告はなく、本症状との異同は不明であった。このため、本症状の病原を明らかにし、苗木生産における生産性の向上を図る為に防除対策を策定する必要がある。

[成果の内容・特徴]
  1. 地下部(根頭部)にがんしゅ状の組織が観察された1年生および2年生のビワ実生苗(図1図2)では、地上部の生育が劣る症状を呈する。

  2. 地下部のがんしゅ状組織からは、脇本のPSA培地上に白色の集落を形成する細菌が多数分離され、苗木を浸漬して分離細菌を接種すると地下部にがんしゅ組織を形成する(図3)。また、接種により生じたがんしゅ組織からは接種細菌と同一の細菌が分離される。

  3. 分離細菌をビワの葉や新梢に穿刺接種すると、地上部にもがんしゅ症状を引き起こす。

  4. 各種細菌学的調査とビワの樹(緑枝、葉の中肋部、葉肉)に対する病原性から、分離細菌はビワがんしゅ病細菌P.syringae pv.eriobotryaeのAグループ菌(水溶性褐色色素産生が陰性で、葉肉部に退緑病斑を形成しない)と同定される(表1図4)。

[成果の活用面・留意点]
  1. 今後は地下部のがんしゅ症状をビワがんしゅ病の病徴のひとつとして、認識する必要がある。

  2. 原因菌が明らかになったことから、既存の防除薬剤を活用した防除体系の策定が可能となる。

  3. Agrobacterium tumefaciensによるビワ根頭がんしゅ病の発生は確認していない。

[具体的データ]

表1 分離菌株の細菌学的諸性質


図1 1年生実生苗の根頭部に形成されたがんしゅ症状


図2 2年生実生苗の根頭部に形成されたがんしゅ症状


図3 浸漬接種により根頭部と根部に形成されたがんしゅ症状


図4 穿刺接種により葉の中肋に形成されたがんしゅ症状

[その他]
研究課題名:果樹ウイルス抵抗性健全母樹の育成と特殊病害虫調査
予算区分 :県単
研究期間 :2006年度


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